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コロナ禍における自社のビジネスモデルを考えるための7つのステップ(“7 Steps to Prepare Your Business Model for Post-COVID-19”)

コロナ禍における自社のビジネスモデルを考えるための7つのステップ(“7 Steps to Prepare Your Business Model for Post-COVID-19”)

みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「コロナ禍における自社のビジネスモデルを考えるための7つのステップ("7 Steps to Prepare Your Business Model for Post-COVID-19")」と題して、コロナ禍のような非常に高い不確定性とリスクを伴う状況に直面した際に、そのような状況に対してどのように対処すべきか、というビジネスモデルの適応方法にについてのお話しです。では本文をお楽しみください。

2020年6月5日
コロナ禍における自社のビジネスモデルを考えるための7つのステップ (BMI Lab社ウェブサイトのブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)

コロナ禍により不確実性とリスクは高いままの状況が続いている。我々はこのような困難な状況にどう対処すればよいのだろうか?コロナ(COVID-19)は多くの業界や企業に影響を及ぼしている。我々は顧客企業とともに、この不確実性に対処するためのアプローチについてディスカッションを実施した。このアプローチを支える重要な考え方は、将来がどうなるかについて、いくつかの可能性をよく理解しておくことである。貴社のビジネスモデルにあてはめたとき、それは何を意味するのか。また、新しい事業機会を見出すという観点からは、それがどんな意味を持つのか?

コロナ(COVID-19)後の世界に向けて自社のビジネスモデルを精査したいならば、次の7ステップのプロセスに従えば、自社のビジネスモデルを状況に適応させるのに役立つ。

ステップ1: 自社の主要なビジネスモデルを文書化する

最初のステップとして、主要なビジネスモデルを文書化する必要がある。ビジネスモデルの文書化をする際には、通常は我々がマジックトライアングルと呼ぶビジネスモデルの4軸を使用する。4軸の出発点は常に顧客で、顧客を中心に考えることからビジネスモデルが始まる。具体的には、「顧客は誰で」「顧客の主なニーズは何か」、といった点を考える。 次の質問は、「顧客に何を提供するのか?」「 提供する製品やサービスは何か?」「顧客に対してどのような価値を生み出すのか?」である。3つ目の軸は、「どのように価値を生み出すのか?」「自社が実行しなければならない主なタスクは何か?」「どのようなパートナーに頼る必要があるか?」「どんな技術を使っているか?」である。そして4つ目の軸は、「このビジネスモデルが利益を生み出す理由は何か?」「自社はどのようにマネタイズするのか?」である。具体的には、収益源、主要なコスト要因は何か、収益エンジンがどうなっているかを説明する。最初のステップ1では、10,000フィート上空からビジネスモデル全体を俯瞰することで、異なるシナリオごとに、自社のビジネスモデルのどの部分にダメージを受ける可能性があるか、あるいは逆にどの部分が強化される可能性があるかを理解し、議論するのに役立つ。

「マジックトライアングル」の4軸は、ビジネスモデルの主要な側面すべてを要約するのに役立つ。

ステップ2: 事業エコシステムを状況に合わせて更新する

2番目のステップは、パンデミックの影響を受けた変化の要因を踏まえてビジネスモデルを更新することだ。デジタル化などの既存トレンドが強まる一方で、事業に逆行するトレンドが出現する可能性もある。たとえば、航空業界では近年、航空券の価格が大幅に下落している。現時点では、今後数年間で世界がどのようになるかを予測することは困難だ。主な変化の要因を特定したら、以降のステップを進めるために自社にとって特に重要な要因を選択する。

ステップ3: コロナ(COVID-19)後のシナリオを策定する

最悪のシナリオと最良のシナリオを作成することで、さまざまなパターンのシナリオに焦点を当てる。

シナリオを作成する上で、変化要因の見極めは重要だ。これらのシナリオは、将来がどうなるかについての可能性を把握するのに役立つ。シナリオ作成においては、たとえば今後3年間など、時間の範囲を定義する必要がある。遠い将来については不確実性が大きくなりすぎるため、時間の範囲は5年を超えないようにすることを我々は推奨している。これまでに特定した主要な影響要因、および更新済みの事業エコシステム・マップと導き出された各種想定に基づき、これらの想定をグループ化してシナリオを作成する。たとえば、グローバル・グリーン・ニューディールが施行されるか延期されるか、といったシナリオが考えられる。このシナリオは、モビリティ、エネルギー、農業、ホスピタリティなど、多くの業界に影響を与える。一方、どのシナリオが現実化するかを見極めるための指標も特定する必要がある。

ステップ4: 自社のビジネスモデルへの影響を分析する

特に重要ないくつかのシナリオを選択したら、選んだシナリオが似通っていないことを確認し、極端なケースを考え、準備の一環として最悪/最高のシナリオも念頭に置く。次に、各シナリオについて、自社のビジネスモデルの各軸にどんな影響を及ぼすかを分析する。我々は、各軸を段階的に検討するのに役立つビジネスモデル評価マトリックスを開発した。たとえば、どの顧客セグメントの利益が増加、あるいは減少するか、当該シナリオがサプライ・チェーンで自社が必要とする主要パートナーにどのような影響を与えるか、といった点を再考するのに役立つ。これを通じて、当該シナリオで既存ビジネスモデルが機能し続けるかどうか、または状況への適応が必要かどうかを判断するのに役立つ。

ステップ5: 新たな事業機会を見極める

シナリオと事業エコシステム・マップは、新たな事業機会を見極めるのに役立つ。新たな顧客ニーズや変化する顧客ニーズにつながる変化の原動力に焦点を当て、自社のスキルやリソースを活用したサービスを生み出し、新たなビジネスモデルを構築する。

ステップ6: ポストコロナ(COVID-19)のビジョンを策定する

現在のビジネスモデルと新しいビジネス機会の分析とを踏まえて、コロナ後の世界に向けた自社のビジョンについて考える必要がある。つまり、自社独自のパーパスとミッション・ステートメントを構築し、将来に向けた時間軸にそれらを投影する必要がある。ある時点までに何を達成しているかを現在形で表現するためには、大きな夢を持ちつつ、成功に焦点を当てる必要がある。チーム、パートナー、顧客とのコミュニケーションをはかり、さらに相手の心や感情に訴えかけるために、このようなビジョンが役立つ。将来がどのようになるかについてのビジョンを伝え、共有することは非常に重要である。優れたビジョンは、自分自身とパートナーを前向きで望ましい方向に導くのに役立つのだ。

ステップ7: 今後の進め方の手順をロードマップとして作成する

最後に、今後の手順を何らかのロードマップとして作成する必要がある。誰がどの分野を担当するのか?社内のどこでアクションを起こす必要があるか?実際に起きるシナリオを把握するための参考にするための指標をどのように追跡、監視するか?併行して、ビジネスモデルの状況変化への適応に役立てるためのプロジェクトを開始する必要がある。

将来に向けたビジネスモデルを準備するための方法

ビジネスモデル・ナビゲーターと55種のパターンカードは、新たなビジネスモデルの開発に役立つ。

最後にこのアプローチの骨子をステップバイステップで要約すると次の通りだ。①②現在のビジネスモデルから始めて、③将来がどのようになるかを把握するための可能なシナリオを作成し、④それが現在のビジネスにとって何を意味するかを分析し、⑤⑥望ましい将来を思い描くことで機会を特定し、⑦最後に今後必要となるステップを行動計画ロードマップに取り込む。

ビジネスモデル・ナビゲーターは、ビジネスモデルを変化に適応させたり新たに開発するための実績ある手法だ。ビジネスモデル・ナビゲーターについての詳細は、書籍、あるいは公式ウェブサイトを参照してほしい。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非問い合わせください。

次回は、「ビジネスモデルの検証について我々が学んだこと("What we have learned about testing business models")」という、事業創造のフェーズで生み出した想定に基づくビジネスモデルの実現に向けて検証を進めていく際の課題と課題に対処するための考え方や対処法に関するブログ記事をご紹介予定です。

渡邊 哲(わたなべ さとる)

株式会社マキシマイズ シニアパートナー

Japan Society of Norithern California日本事務所代表

早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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