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シナリオ管理とビジネスモデル思考を組み合わせる:なぜ戦略的アジリティが企業戦略を定める新たな方法なのか?(“Combining scenario management and business model thinking: Why strategic agility is the new way to define your corporate strategy”)

シナリオ管理とビジネスモデル思考を組み合わせる:なぜ戦略的アジリティが企業戦略を定める新たな方法なのか?(“Combining scenario management and business model thinking: Why strategic agility is the new way to define your corporate strategy”)

みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「シナリオ管理とビジネスモデル思考を組み合わせる:なぜ戦略的アジリティが企業戦略を定める新たな方法なのか?("Combining scenario management and business model thinking: Why strategic agility is the new way to define your corporate strategy")」という、シナリオ・プランニングとビジネスモデル・イノベーション手法を使って未来のビジネスモデル検討を進める具体的な方法についてのお話しです。では本文をお楽しみください。

2021年6月10日
シナリオ管理とビジネスモデル思考を組み合わせる:なぜ戦略的アジリティが企業戦略を定める新たな方法なのか?(BMI Lab社ウェブサイト)のブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています

過去数十年にわたり、企業は昔ながらのアプローチで戦略を定めてきた。基本的には、トレンドを分析し、最も自社と関連性の高いトレンドを選択し、「明確な将来像」に基づいて戦略を設計する。ところがこの方法では、せいぜい明確な方向性を示すだけで、企業に新たな発展の余地をほとんど与えないような一次元的な戦略が策定される。そのため、戦略の実行が戦略の正当化に変貌してしまうことが多く、事業環境の変化に対する問いかけや、変化を踏まえた代替戦略案の探索とテストといった本来必要なことが、戦略活性化でなく戦略を阻害するものとして認識されてきた。

コロナ禍によるパンデミックが予想よりもずっと長期にわたって我々の生活の一部となっている中、この世界的な危機は戦略担当者たちに従来型の戦略的思考の限界を見せつけたといえる。一方では、依然として不確実性は非常に高く、今後も高いままと考えられる。たとえ地球環境の保護、デジタル・コミュニティの台頭、循環型経済(サーキュラー・エコノミー)成熟期の到来など、各種の変化が明確な新基準として確立されるとしても、もはや1つの未来像を考えるだけでは不十分である。代替シナリオのフレームワークを使って、さまざまな可能性が検討されるようになってきている。他方では、企業開発の複雑さにより、長期間にわたって単一の均質な戦略で取り組むことが、ほぼ不可能になっている。その代わりに、新たなビジネスモデルを開発、検証し、自社の戦略フレームワークに繰り返し統合し続けなければならない。企業の戦略が、従来の一次元的な戦略から、さまざまなビジネスモデルを組み合わせたポートフォリオに変わるのだ。

シナリオとビジネスモデルの二つのアプローチはともに、長年にわたって現場で効果的に実践されてきた。独ScMI社では、1990年代からさまざまな業界の500を超えるシナリオ・プロセスにシナリオ管理手法を利用してきた。また、スイス・ザンクトガレン大学のスピンオフであるBMI Lab社は、科学的な卓越性と実践経験を組み合わせることにより、企業が革新的なビジネスモデルを活用して継続性のある新事業を構築する支援をしてきた。

ScMI社とBMI Lab社は、長年培ってきた専門知識を統合して、企業戦略の捉え方と策定方法を大きく変える共同アプローチを開発した。戦略の基礎となる既存や新規のビジネスモデルの堅牢性を、既存や新規のシナリオを使ってテストする。そして、新たなビジネスモデルを導き出せるように新規のシナリオを開発する。その結果として、もはや不確実性を無視せず、新たな事業機会を常に模索し、取り入れるようになる。これこそが、我々が戦略的アジリティと呼ぶ新たな手法だ。

出発点としてのワークショップ

シナリオとビジネスモデルについて、それぞれのアプローチで個別にワークショップやプロジェクト全体を進めていく。この両アプローチをそれぞれ紹介するだけでなく、それらを組み合わせる方法を1日で紹介するにはどうすればよいか?そのために新たに開発したのが、導入ワークショップだ。両アプローチのトピックについて迅速かつ十分な根拠に基づく洞察と、各社独自の事情への適用とつなぎこみの最初の機会となる。具体的には、次の4つの手順で実施する。

ステップ1:ビジネスモデルのレビュー

状況を明確に理解することが、このアプローチを成功させるための必須条件だ。したがって、最初のステップでは、評価すべき適切なビジネスモデルを分析して議論する。これを実行するために、ビジネスモデル・イノベーションのプロセスで広く利用しているビジネスモデルの4軸(WHO-WHAT-HOW-VALUE)でビジネスモデルを記述する。

ステップ2:シナリオ評価

シナリオはいくつかの影響要因で構成されており、それらの影響要因が堅牢性評価の出発点となる。したがって、評価プロセスを開始する前に、使用すべき各種シナリオのセットを選択し、どのシナリオ群が特定のプロセスに適しているかを評価選定する必要がある。今回はポストコロナ時代をテーマにしているため、ScMI社によるポストコロナのシナリオを使用することをお勧めする。

ScMI社のポストコロナ・シナリオ

ステップ3:堅牢性の評価

選択したシナリオが自社のビジネスモデルに与える影響を分析するために、ビジネスモデル堅牢性スコアを利用する。ビジネスモデル堅牢性スコアは、特定のシナリオでビジネスモデルがどのように進化するかを浮かび上がらせ、シナリオに記述されている影響要因を踏まえた潜在的な将来パフォーマンスを評価するツールである。

ステップ4:戦略的判定

アプローチの最終ステップでは、評価済みのビジネスモデルの各軸に対するシナリオの影響を詳細に判定できるようになる。この判定をもとに、実行すべき潜在的なアクションを定めることができる。判定の結果得られるアクションの例としては、将来顧客を失う可能性のあるビジネスモデルの改善、需要の増加によって負荷が高まる可能性のあるバリューチェーンの統合、あるいは今後登場する可能性のある未開拓市場に対応するためのビジネスモデル全体の拡張準備などが挙げられる。

BMI Lab社とScMI社は、各種の効果的なツールを活用して不確実性やビジネスモデルに対処する方法、さらには各種ツールを組み合わせることで、自社事業の将来に向けた具体的な意思決定を可能にする方法を、コンパクトなワークショップとして簡単に学習する機会を企業や公共機関に提供している。

長期的な成功への新たなアプローチ

当然ながら、たった1日のワークショップで独自のシナリオを開発したり、新しいビジネスモデルを設計したりすることはできない。また、確かに一度のワークショップでは長期的な戦略プロセスの代わりにはならない。しかし、我々がワークショップで教える根本的な考え方は、戦略プロセスの基礎となり得る。そして、これには次の4つの要素が含まれる。

ビジネスモデル・ランドスケープの分析:

複雑な事業環境においては、単一のビジネスモデルに従っている企業はほとんどない。むしろ、複数のビジネスモデルが共存しているのが普通で、戦略的な成功は主にこれら複数のビジネスモデルを有意義な形で調整できるかにかかっている。このような相互関係の存在を認識し、理解していることが基盤として不可欠だ。

シナリオ開発:

ワークショップでは既存のシナリオ(現状は主にポストコロナのシナリオ)を使用するが、長期的には自社独自のシナリオを開発し、フレームワークに具体的な条件を記述する必要がある。ここで求められるのは、いわば自社専用の「未来地図」だ。

新たなビジネスモデルの設計:

既存のビジネスモデルの拡張、強化、または置き換えが、既存のビジネスモデルの戦略的判断の一環として要求される。したがって、それに伴う新たなビジネスモデルの設計は共同アプローチに必須のプロセスであり、包括的戦略への新たなビジネスモデルの統合も同様に必須のプロセスだ。

シナリオ監視:

ビジネスモデルの堅牢性チェックでは、主に実現確率の高いシナリオを考慮する。ただし、実現可能性の期待値は常に変化するため、ビジネスモデルの堅牢性についての判断が変わる可能性があり、場合によっては根本的に異なる新たなシナリオが生まれることもある。したがって、シナリオの継続監視と情報更新は、戦略的アジリティの重要な要素と言える。

シナリオを使用してビジネスモデルの堅牢性を評価することで、実際に何かイベントが発生した後にあわてて反応するのでなく、あらかじめ将来を能動的に設計して準備しておくことが可能となる。

シナリオ管理とビジネスモデル思考の組み合わせについて詳しく知りたい場合は、当社の戦略的アジリティの専門家にお問い合わせ頂きたい。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非問い合わせください。

次回は、「イノベーションとアントレプレナー精神に関するお薦めポッドキャスト7選("Our 7 Podcast Recommendations about Innovation and Entrepreneurial Spirit")」という、アントレプレナー的なマインドセットを養う上で参考になるお薦めポッドキャストに関するブログ記事をご紹介予定です。

渡邊 哲(わたなべ さとる)

株式会社マキシマイズ シニアパートナー

Japan Society of Norithern California日本事務所代表

早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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