「既存のビジネスモデルに影響を及ぼす可能性のある2022年の主要トレンド("Key trends in 2022 that can influence your business model")

イノベーション, ビジネスモデル・新規事業創出

みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「既存のビジネスモデルに影響を及ぼす可能性のある2022年の主要トレンド("Key trends in 2022 that can influence your business model")」という、サステナビリティなどの世の中のトレンドがビジネスモデルに与える影響についてのお話しです。では本文をお楽しみください。

「既存のビジネスモデルに影響を及ぼす可能性のある2022年の主要トレンド("Key trends in 2022 that can influence your business model")

2022年4月26日
既存のビジネスモデルに影響を及ぼす可能性のある2022年の主要トレンド(BMI Lab社ウェブサイトのブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)


トレンドを見極めることは長期的な成功の基盤である

今日では、変化のスピードが非常に速いため、新しい市場トレンドに遅れずに追随していくことがますます複雑な話になってきている。しかし、遅れることなく最新技術トレンドに追随して長期的な事業計画策定を有利に進め、時代を先取りし、ライバルに出し抜かれないためには、業界の様々な変化を早期に認識することが非常に重要だというのは誰にでもわかることだ。起業家たちの役割は、ビジネスを成長させ、新しいトレンドに適応させることだ。業界は刻一刻と変化するのだから、それに合わせてビジネスを進化させる必要があるのだ。したがって、消費者の習慣や行動から強い影響を受ける最新の市場トレンドを常に把握しておく必要がある。

以下のブログ記事では、あなたの会社の発想のきっかけになる事を期待して、ビジネスモデルの進化に関する現在のトレンドを紹介したい。


用語の定義 - トレンドとは何か?

トレンドは、傾向と呼ばれることもあり、特定の分野または市場全体に長期的な影響を及ぼす可能性をもつ世の中の動きである。トレンドは、市場のプレイヤーを成功している企業と市場から追い出される企業に分けることで、市場の進化を促す。

市場動向調査では、過去および現在の市場データを調べ、業界内および顧客の間での一般的な傾向を検出する。企業は、顧客の好みの変化や市場全体の傾向を考慮することで、市場シナリオを作成し、信頼性の高いマーケティング戦略を構築できる。結果的に、企業にとって自社の将来に影響を与える可能性のある傾向を認識するために、変化の兆候をいち早く察知することがますます重要になってきている。


なぜビジネスにとって重要なのか?

適切なタイミングでトレンドを見極めることができれば、市場機会をつかむことにつながる。実際に、こうした変化を認識するように努めることで、製品、サービス、さらにはビジネスモデル全体を、最終顧客に左右される顧客の需要に常に合致させることができるため、事業戦略の長期的な成功につながる。成功の鍵は、事業戦略を市場と整合させることで競争力を維持し、常に新しいトレンドに積極的に対応することにある。

たとえば、世界有数の消費財メーカーであるP&G社は、社会意識の高い消費者という新しいトレンドを取り入れることで、自社のブランド・ポジショニングを変え、競合他社との差別化を図った。その一環として、同社は2014年に女性のエンパワーメント運動を支援する"Always #LikeAGirl"キャンペーンを開始した。

これは、新たな消費者層の好みと市場のトレンドを即座に特定し、顧客の大きな反応を引き出し、結果として売上喚起に成功したわかりやすい事例といえる。

このキャンペーンによって以下のような成果があがった。

  • 9,000万回以上の視聴回数、世界で2番目に話題の動画

  • 最初の3か月間で177,000件の#LikeAGirlツイート(多くの有名人を含む)

  • 最初の3か月間で44億回以上のメディア・インプレッション


最新トレンドに追随することによるメリット

ソーシャル・メディアのユーザーが最新トレンドを追うのと同じように、企業も業界内で新たなトレンドが出現したらすぐに追随する必要がある。以下に、企業が最新情報を入手する必要がある理由をいくつか挙げたい。

・新たな事業機会

新たなトレンドは、ビジネスを拡大し発展させる新しい市場機会を意味する。追随することで、顧客により多くのものを提供し、新しい顧客を獲得することも可能だ。

・成長

新たなビジネスの方向性を決めるのはたいてい難しく、物事が順調に進んでいるときは特に難しいが、変化することは進化することでもあり、良い行動と言える。新たな方向性をに進んだとしても、それがビジネス上の利益になるかどうかはわからないが、変化に遅れずに追随することが重要なのだ。新しいアイデアを試すための実験を行うことで、チャンスを逃さないようにするという戦略も考えられる。

・予測

最新トレンドを自社のシステムに組み込むことで常に最新情報を把握していれば、自分の業界で将来何が起こるかを予測しやすくなる。そうすれば、独自の調査、観察、会話に基づいて予測を立てることができ、将来に向けた計画を立てるうえで、より万全な準備をできるはずだ。

環境に合わせて変化しない企業は消滅することになる。トレンドに従ってビジネスを変革せよ
— Sutevsky,D.、2022年


循環型経済(サーキュラーエコノミー)はビジネスモデルの大きな変化を促す

ジェレミー・グッチェ氏による2022年トレンドレポートでは最近の各種動向を掲載しているが、中でも循環型経済が現時点で最大のトレンドの1つであるとしている。この重要なトピックに関するBMI Labの観点を詳しく知りたい場合は、「循環型経済のためのビジネス モデル・イノベーション」に焦点を当てたホワイトペーパーをダウンロードしてほしい。

さまざまな業界から選んだ以下の4つの事例は、どのようにして持続可能性と循環型アプローチの重要性がますます高まり、企業各社のビジネスモデルの中心に据えられるようになるかを示している。

生分解性技術

昨今では、地球環境への影響を減らすために、リサイクル可能で生分解性の素材で作られた技術製品やアクセサリーを組み込むように努力することは、企業の重要な義務となっている。この新たなトレンドが生まれたのは、消費者の気候変動の影響への懸念がますます増加し、行動習慣が徐々に変化しているからである。消費者は、環境に優しい製品を求めることを通して、自分たちが地球上に排出する二酸化炭素の排出量を削減する方法を模索している。消費者側がそうすることで、企業側は環境に配慮した素材の採用を進めなければならなくなるのだ。

一例として、「Incipio社」は、100%堆肥化可能な素材である"Organicore"で作られた植物由来のデバイス・プロテクター製品を提供している。同社は、プラスチック廃棄物の削減に貢献する環境に優しい各種の携帯電話ケースを販売開始した。

廃棄物ゼロの化粧品

消費者も環境への影響を抑えようとする傾向が強まっており、環境への取り組みに関するブランド各社へのプレッシャーが高まっている。消費者の要求は非常に厳しく、消費者個人が環境への影響を減らすのに役立つ製品が求められている。そのため、化粧品業界では廃棄物ゼロが現在のトレンドの1つとなっており、企業各社は自社製品、パッケージ、製造工程で廃棄物をゼロにすることについての優先度をより一層高めている状況だ。

サステナブルなメイクアップの良い例として、「Sprout World社」が発表した、製品に封入された種子が製品使用後に芽吹いて野生の花が咲くという、廃棄物ゼロのアイライナーが挙げられる。アイライナーは認証済みの天然生分解性素材で作られており、使い終わったアイライナーそのものを植えることができる。

農場から電話へ

デジタル化のプロセスは加速しており、食品業界の中小企業向けにも新たなデジタルソリューションの提供が進んでいる。コロナ禍の間に、中間業者を介さずに地元の農家から直接商品を購入し、地域経済を支援するという判断をした消費者が増加した。このことから、生産者と地元の農家から新鮮な商品を購入することに関心のある消費者が生産者に直接連絡を取ることができるデジタルプラットフォームを提供することが、コロナ禍の間にブランド各社における1つのトレンドとなった。

一例として、消費者と地元の農家を結びつけるカナダの電子商取引プラットフォーム「Local Line」が挙げられる。同プラットフォームでは、消費者は手作りの地元の農産物を事前にオンラインで直接注文し、支払いをすることで、混雑した一般向けの市場で購入する必要なく、自分の住む地域の小規模な地元の農家を支援できる。

エコ小売業者

環境への影響に関して消費者がブランド各社にどのような期待を抱いているかを知ることは、重要な洞察と言える。消費者は、温暖化ガスの排出量を削減するために必要な変化を起こすのは個人の行動よりも企業の責任であると認識している。企業が環境に配慮したデザインや建築を店舗に取り入れ、環境への取り組みを実証している背景には、そのような消費者の期待がある。

一例として、インドの美容・健康ブランド「ソウルツリー」が挙げられる。同社は店舗自体が生分解性素材で作られた旗艦店舗をオープンし、太陽エネルギーのみを使用した顧客サービスを提供している。店内でも、従業員は持続可能な素材で作られた服を着用し、環境に優しく倫理的な未来への取り組みをさらに強調している。


自社のためにサステナブルなビジネスモデルを構築する

よりよい意思決定を行えるようにし、新たなトレンドの中でどれを取り入れるべきかを理解するためには、自社のビジネスとその周囲を取り巻くエコシステムについて広範囲に把握することが非常に重要である。自社のためにサステナブルなソリューションを生み出すことが、長期的なビジネス成功の鍵となるのだ。自社のために循環型エコシステムとサステナブルなビジネスモデルを生み出すプロセスを、システマチックな形でガイドする方法の一つがサーキュラー・ナビゲーター手法である。

自社においても、この重要なトピックに取り組むことに興味を持って頂けただろうか?もしそうであれば、サーキュラー・ナビゲーターのホワイトペーパーをダウンロードするか、ハーバードビジネスレビュー(Harvard Business Review)誌に掲載された我々の記事をご一読いただきたい。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。

次回は、当方の友人で北カリフォルニア・ジャパンソサエティの理事であり、米UCバークレーMBAスクールで教鞭をとるジョン・メツラー氏のOpen RANに関するブログ記事をご紹介予定です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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