あなたの会社にオープンイノベーションは必要でしょうか?("Do you Need Open Innovation?")

オープンイノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も2025年末に発売予定の英語書籍『OPEN INNOVATION WORKS』の著者であるダイアナ・ジョセフ氏、ダン・トマ氏、及びエスター・ゴンス氏のブログ記事をご紹介します。

今回は、「あなたの会社にオープンイノベーションは必要でしょうか?("Do you Need Open Innovation?")」という、オープンイノベーションの有効性診断についてのお話です。では本文をお楽しみください。

あなたの会社にオープンイノベーションは必要でしょうか?("Do you Need Open Innovation?")

2023年2月16日
ダイアナ・ジョセフ氏
あなたの会社にオープンイノベーションは必要でしょうか?(書籍の著者であるダイアナ・ジョセフ氏、ダン・トマ氏、エスター・ゴンス氏が"OPEN INNOVATION WORKSウェブサイト"に掲載したブログ記事を、著者らの許可を得て翻訳、掲載しています)

イノベーション主導の成長は、今や世界中の多くの企業にとって戦略上の重要課題となりつつあります。しかし、その実現方法は企業ごとの状況によって異なり、それぞれに合った判断が求められます。ある企業は、社内(クローズド)イノベーションのみに完全に注力するかもしれません。一方で、社内イノベーションを断念し、外部からの調達に全面的に依存するオープンイノベーションへと切り替える企業もあります。さらに、両者を組み合わせたハイブリッド型のアプローチを採用するケースも見られます。どの選択が正解というわけではなく、それぞれの戦略にはその企業に合った理由と背景があります。

企業のイノベーション活動にオープンイノベーションを取り入れるかどうかは、明確なニーズに基づいて判断する必要があります。

そもそも、あなたの会社には本当にオープンイノベーションが必要でしょうか?オープンイノベーションのメリットをどこかで読んだから、魅力的に感じたから、あるいは競合他社が取り組んでいるからといった理由だけで導入しても、それだけでは十分とは言えません。

オープンイノベーションに取り組む前には、戦略やリソースの配分、人材の状況、そして自社のコアビジネスモデルの賞味期限など、さまざまな要素を慎重に検討する必要があります。

以下の自己診断を実施して、自社にオープンイノベーションが必要かどうか、そしてその準備が整っているかどうかを確認してみてください。


7つの基本的な質問それぞれについて、1〜5のスケールで自己診断をしてみてください。画面を一番下までスクロールすると、あなたのスコアと、この本を読むべきかどうかについての私たちのおすすめが表示されます。自己診断の結果を他の人に見せる必要はありません。有意義なフィードバックを得るためにも、ぜひ正直にご回答ください。


質問 1:最も収益性の高いビジネスには、あとどれくらいの時間が残っていると思いますか?

A:10年以上残っている
この選択肢を選びたくなるかもしれませんが、本当にそうでしょうか? 大きな変化の時代において、今後10年以上にわたって収益性が続くという確かな証拠を示すのは非常に難しいものです。もう一度、根拠となる情報を見直してみることをおすすめします。

B:7〜9年

C:4〜6年

D:2〜3年

E:0〜1年(最も収益性の高い事業はすでに業績が低下している、あるいは今後1年以内に低下する見込みだ。)


質問 2:現在、御社ではオープンイノベーションにどのように取り組んでいますか?

A:社内(クローズド)イノベーションにのみ取り組んでおり、それだけでは成長を維持するには不十分である。過去にオープンイノベーションを試したこともあるが、すべて失敗に終わった。

B:すべてを自社だけで行うことは難しいと感じ始めており、オープンイノベーションという考えを少しずつ検討し始めている。

C:社内(クローズド)イノベーションとオープンイノベーションの両方に取り組んでいるが、社内主導に偏っており、外部との連携はまだ十分とは言えない。

D:新しいビジネスアイデアを実現するために、社内外のイノベーションをうまく組み合わせて取り組んでいるが、継続的な成果にはまだ結びついていない。

E:社内(クローズド)イノベーションとオープンイノベーションをうまく組み合わせ、常に新しいアイデアを市場に送り出している。そして、それを裏付ける実績もある。


質問 3:社外には、私たちにとって必要なアイデア、スキル、そして人材があると思いますか?

A:いいえ。私たちの社員は非常に優秀で忠誠心も高く、中核事業は世界にとって不可欠で、他社に代替できるものではない。当社の知的財産も堅固に保護されており、私たちが解決している重要で普遍的な課題に対して唯一の解決手段となっている。他社の動向にあまり注意を払う必要はないと考えている。

B:少しはあるかもしれない。当社の領域の周辺や隣接分野で活動している人たちが、私たちより先に何かを思いついたり、トレンドに気づいたりする可能性がある。こうした動きに対して、ある程度は目を配っておく必要があると感じている。

C:ある程度はそうだと思う。社外でも、私たちの事業に関係する活動がそれなりに行われているため、一定の注意は必要である。ただし、そのために当社の強みである中核事業からエネルギーを割くつもりはない。

D:かなりあると思う。私たちが関わる分野は変化が激しく、新しい素材、プラットフォーム、ビジネスモデルの進展によって、将来的に状況が大きく変わる可能性がある。私たちはエコシステムの中で一定の存在感を持ち、積極的に良好なパートナーシップを築いていく必要がある。

E:非常にそう思う。私たちを取り巻く環境は急速に変化しており、現在または近い将来においても大きな不確実性が存在している。私たちは、社外のアイデアエコシステムに積極的に関与し、他の組織と継続的にリソースや取り組みを交換しながら、取り残されないようにする必要がある。


質問 4:自社ではコントロールできない外部要因は、どのようにビジネスへ影響を及ぼす可能性がありますか?

A:起こりうる事態については極力考えないようにしており、ただ目の前の一歩一歩を踏み出すことに集中している。

B:外部環境が事業に甚大な影響を及ぼす可能性があることは認識しているが、特に対処のための計画は持っていない。その時が来たら対応する方針である。

C:すでに発生した外部事象については備えが整っており、再発しても対応可能である。しかし、新たな危機が突然、あるいは徐々に発生した場合に備えた計画は存在しない。

D:有効な計画は策定済みであるが、実際に何かが発生した際にそれを実行できるかどうかは明確ではない。

E:発生確率は低いが影響の大きい事象について、常に検討を行っている。既知のリスクには具体的な対応計画を持ち、新たな課題を見逃さぬよう将来を見渡している。また、不測の事態に備えるための包括的な戦略を有し、これらの計画を定期的に見直すとともに、迅速な対応が求められるシナリオに備えた訓練も実施している。


質問 5:御社には、オープンイノベーションに取り組むための企業としての成熟度がありますか?

A: 当社は、組織構造、プロセス、文化、あるいはリーダーシップの影響により、新しいアイデアを即座に却下してしまう傾向がある。

B: オープンイノベーションには成熟したプロセス、文化、リーダーシップが不可欠であることは認識しているが、それらの能力構築にはまだ着手していない。

C: オープンイノベーションに必要なリーダーシップ、プロセス、文化の能力構築に着手している。

D: 当社は一定の成熟度を有しており、現在は一貫したオープンイノベーションの成果を阻害している可能性のある能力面の課題に取り組んでいる。

E: 当社は、外部からの新しいアイデアを活用する準備が万全に整っている。実際にその取り組みを進めており、顕著な成果も確認されていることから、それが裏付けられている。


質問 6: 御社には、オープンイノベーションに取り組むためのリソースはありますか?

A: 当社は、すべてのリソースを高効率なオペレーションに投入している。余裕も、非常時に備えた資金も、遊休の能力も存在しない。

B: もし中核事業が多少なりともカニバリゼーションで浸食されるとしたら、オープンイノベーションにリソースを投入することは可能である。誰も進んでそれを行いたがらないが、不可能というわけではない。

C: 多少なりともリソースを捻出することは可能である。

D: この目的のために確保した資金がある。

E: この優先事項に対しては、十分なリソースを割り当てている。


質問 7:御社の全体的なイノベーション戦略は、オープンイノベーションに対応できる状態にありますか?

A: 当社にはイノベーション戦略が存在しない。イノベーションに関する意思決定は、トレンドや政治的背景、流行語にのみ基づいて行われている。

B: 当社には明確なイノベーション戦略は存在しない。イノベーションに関する意思決定は、企業全体の目標に基づいて行っている。

C: 当社には明確なイノベーション戦略は存在しない。イノベーションに関する意思決定は、企業全体の戦略に基づいて行っている。

D: 当社にはイノベーション戦略があるが、それは明確でも実行可能でもなく、意思決定の指針として十分に機能していない。

E: 当社には、意思決定に常に活用している、明確かつ的確に定義されたイノベーション戦略が存在する。


評価・解釈

上記の各回答について、以下のように自己採点してください。

A: 1点
B: 2点
C: 3点
D: 4点
E: 5点

ポイントを合計してください。あなたの合計スコアは何点でしたか?その合計点が何を意味するのかを見てみましょう。

7~14点:
現時点では、オープンイノベーションに取り組む準備が整っていません。組織の能力やリーダーシップの面でまだ十分とは言えず、または中核事業に関する課題が非常に大きく、探索的な取り組みよりも緊急対策を優先せざるを得ない状況かもしれません。

15~29点:
オープンイノベーションは、自社に非常に適しています。外部との連携から恩恵を受けるために必要な時間、リソース、リーダーシップがそろっており、十分に活用できる状態にあります。

30~35点:
すでにすべてが順調に整備されています。これ以上オープンイノベーションに取り組む必要はないかもしれませんが、今の取り組みをさらに補完する手段として活用する余地はあるでしょう。

スコアが高くても低くても、あるいはその中間であっても、皆さんの組織の現状をしっかりと見つめ直すことができたのではないでしょうか。大企業は、イノベーションによる成長に必要な多くのリソースを豊富に備えています。しかし、社内ルールや複雑な利害関係者との社内調整、そして組織の大きさそのものが、迅速な実験を非常に難しくしています。

現状を把握した今、次に取るべき一手は何でしょうか?


いかがでしたでしょうか。弊社では、シリコンバレーや欧州のスタートアップとのアライアンスによるオープンイノベーションの支援サービスである「テクノロジーソーシング」サービスを日本企業向けに提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。

次回のブログは「オープンイノベーションを成功させるために必要な3つのこと("The Three Things Open Innovation Needs to Work")」という、オープンイノベーションを成功させるために準備すべきキーポイントについてのお話です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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