シーズを活用した事業アイデア創造ワークショップ事例~東京大学MERITエグゼクティブセミナー~
こんにちは、マキシマイズの田中です。
今回は技術シーズを活用した新事業アイデア創造ワークショップの実施事例をご紹介させていただきます。東京大学大学院の博士課程の学生を対象にワークショップを行った事例です。
目的
本プログラムは東京大学大学院の博士課程の学生を対象に、卒業後の進路に関わらずビジネスマインドや、実践的な事業創造のスキルを身につけていただく事を目的として、2018年、2020年に続き東京大学「統合物質・情報国際卓越大学院(MERIT-WINGS)」の一環として実施されました。
実施の狙い
今回のワークショップでは、卒業後も様々な形で研究を継続される方が多い事を念頭に、研究成果の社会実装などに必要なる事業創造スキルやプロセス習得していただくため、ドローンを技術シーズとして活用する新事業アイデアの創造を行いました。
実施内容
プログラムはビジネスモデル・ナビゲーター手法の事業創造プロセス、①現状分析、②アイデア創造、③事業設計、④事業検証の4ステップで実施しました。
①現状分析
現状分析のステップではアイデア創造の出発点として、参加者個々がコロナ後に経験した問題点を出し合い、その問題の切迫度によって解決する課題を特定しました。各チームからは外出自粛による旅行などリアルな体験の機会の喪失や、リモート講義など在宅が続く事による食生活パターンの固定化等の課題が提示されました。
②アイデア創造
アイデア創造のステップでは、勝ちパターンを55に分類したビジネスモデル・パターンカードをヒントにドローンを活用して、現状分析で特定した課題を解決するアイデア創造します。
「フランチャイズ」や「サプライ品モデル」といったパターンを使用し、ドローンというシーズでは通常考えないような視点も含め、パターンカードをヒントに30個から多いチームでは50個程のアイデアを創造しました。
続くアイデア評価の過程では、創造した多数のアイデアを市場性と技術的な実現性に基づき評価選定します。創造したアイデアを発展させ当初想定した課題と社会課題を同時に解決するようなアイデアなど様々なアイデアが検討されました。
③事業設計
事業設計のステップではビジネスモデル・ナビゲーターのビジネスモデルの定義、ビジネスモデルの4軸で各チームが選定したアイデアをビジネスモデルの形に具体化します。ビジネスモデルの4軸はWho:対象顧客、What:提供価値、How:提供プロセス、Why:収益モデルの4軸でシンプルかつ抜けもれなくビジネスモデルをストーリーとして整理することができます。各チーム1時間ほどの短時間でアイデアをビジネスモデルの形に具体化しました。
最終的にドローンを使用するバーチャル旅行によって自治体と旅行者をマッチングし過疎化に悩む地域の活性化から移住者の誘致にまで発展させるアイデアや、ドローンで夕食を宅配するサービスでは地域で余って処分されてしまう食品や食材を使用し顧客の様々な食事を食べたいというニーズを満たしながらフードロス問題も解決するというアイデアなどが考え出されました。
④事業検証
事業設計で具体化した仮説のビジネスモデルを検証しビジネスモデルを洗練させる事業検証のステップでは、検証すべき仮説に優先度をつけ検証を行っていきますが、今回は実際の検証に替え、各チームのアイデア発表に対して互いに建設的フィードバックを行う形で事業検証を実施しました。
実施結果
講義の参加者からは「55種類のパターンに当てはめる事で、素人でも系統立ててアイデアを創造することができた」、「創造性を感覚ではなく、論理的かつシステマティックな枠組みの中から発揮できることがわかった」など事業創造を一連のプロセスに沿って進めるビジネスモデル・ナビゲーター手法の有効性について実感を持って学んでいただきました。
実施概要
名称:東京大学「統合物質・情報国際卓越大学院(MERIT-WINGS)」MERITエグゼクティブセミナー
日程:2022年2月16日
事業創造テーマ:ドローンを活用した新たなビジネスの創造
内容:数名ずつのチームに分かれ、『ビジネスモデル・ナビゲーター』を活用して新規事業アイデアを考案、各チームは創造したビジネスモデルをプレゼンテーションする
統合物質・情報国際卓越大学院(MERIT-WINGS)とは
統合物質・情報国際卓越大学院は、東京大学大学院 工学系研究科、理学系研究科、新領域創成科学研究科が協力して行う大学院教育プログラムで、文部科学省「博士課程教育リーディングプログラム」事業により開始したものです。
最先端の統合物質科学を基軸として、高度な専門性と科学技術全体を俯瞰するグローバルな視点を持ち、産学官の広い分野でオープンイノベーションを先導して、人類社会の課題解決をリードする人材の育成を目的としています。
DX・イノベーション手法を学ぶ、
マキシマイズのセミナー
今回は研究人材を対象に、シーズを起点とした事業創造スキルの習得を目的とした講義の事例をご紹介させていただきました。弊社ではドローン以外にも実際の技術シーズを起点として3セッションで事業創造スキルを習得するプログラムなども提供しております。ご興味の方は是非お問合せ下さい。
今後もビジネスモデル・ナビゲーターの事例やセミナーの情報などご紹介させていただきます。
WRITER
田中 陽介(たなか ようすけ)
株式会社マキシマイズ コンサルタント
株式会社マキシマイズにて、国内大手企業向けに海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を支援。新規事業立ち上げ、事業開発に強みを持つ。広告代理店、中国向け電子コミック配信事業、プロ野球独立リーグ球団運営を経て現職。「イノベーションの攻略書」共訳。立教大学法学部卒業。