あなたの会社に本当にイノベーション会計は必要なのか?(“DOES YOUR COMPANY ACTUALLY NEED INNOVATION ACCOUNTING?”)
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みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。
今回も書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏の最新書籍『The Innovation Accounting』に関するブログ記事をご紹介します。
同書の日本語版『イノベーション・アカウンティング』を2022年10月5日に発売開始しました。
今回は、「あなたの会社に本当にイノベーション会計は必要なのか?(“DOES YOUR COMPANY ACTUALLY NEED INNOVATION ACCOUNTING?”)」という、イノベーション計測の仕組みを導入するのに適した企業の特性についてのお話です。では本文をお楽しみください。
あなたの会社に本当にイノベーション会計は必要なのか?(“DOES YOUR COMPANY ACTUALLY NEED INNOVATION ACCOUNTING?”)」
~イノベーション計測の仕組みを導入するのに適した企業の特性~
2023年3月21日 ダン・トマ氏
あなたの会社に本当にイノベーション会計は必要なのか?
(ダン・トマ氏が“OUTCOME社ウェブサイト”に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)
人生の多くの場面で、我々が望むものは実際に我々に必要なものと大きく異なる。私が欲しいのはあの美味しいブラックフォレストケーキ(ドイツのチョコレート生地+生クリーム+チェリーのケーキ)だが、私に本当に必要なのは毎日のジョギングだ(笑)。同じことがビジネスにも言える。企業が欲しいと言っているものが、その企業に必要なものと同じとは限らない。顧客からのプロジェクト要望の説明を受けたことがある人ならだれでも同意するはずだ。
我々は、イノベーションのパフォーマンスを計測するコツ(つまりイノベーション会計の導入方法)を教えてほしい、と企業のリーダーから何度も相談を受けたことがある。しかし、しばらく会話をしてみると、彼らが実際に必要なのは、代わりにイノベーション手法を研ぎ澄ますことであるとお互いに気づく。別の言い方をすると、もし企業がイノベーションを実施していないなら、もしくはイノベーションを十分にプロフェッショナルなやり方で実施していないなら、計測システムの導入にお金や時間を投じても無意味ということだ。パフォーマンス測定の指標が問題になるより先に解決する必要のあるより大きな課題がある。
以下に、企業が本当にイノベーション会計を必要としているのか、あるいは単にTo Doリストに実施済みの印をつけるためにイノベーション会計を導入したがっているのかを見極めるために我々が使っている方法をまとめた。もし、イノベーション指標がないことが自社の重要課題だと考えているなら、以下の質問に(正直に)答えてみてほしい。
通常は常時20チーム以上のイノベーションチームが新たな事業アイデアに常時携わっている |
YES | NO |
---|---|---|
自社のイノベーション費用は、かなりの金額の営業費用(OPEX)として投じられている |
YES | NO |
自社では、イノベーションから一定の結果を生み出すことが義務付けられており、戦略を通じてイノベーションと中核事業とが紐づけられている |
YES | NO |
自社では、イノベーションがキャリアパスとして捉えられている |
YES | NO |
わが社では、イノベーションは主に選任のフルタイムの社員が実施している |
YES | NO |
自社では、イノベーションのために複数の手段(例:CVC、社内イノベーション、M&A、スタートアップ・アクセラレーション・プログラム等)が組み合わせ利用されている |
YES | NO |
自社において、イノベーションは縦割り組織でない |
YES | NO |
自社では、イノベーションは継続的に実施されており、単発であったり、1年の決まった時期にのみ実施したりという状態ではない |
YES | NO |
結果の見方は非常にシンプルだ。基本的に、上記の質問に対してNOの答えが4つあるいはそれ以上あれば、イノベーション会計はあなたの会社にとっては時期尚早である。イノベーション会計の代わりに注力する必要があるのはイノベーションの実践である。
それとは逆に、もしほとんどの質問に対する答えがYESであれば、あなたの会社はイノベーション会計から大きなメリットを得られるだろう、そして自社専用の指標システムを早急に構築する必要がある。イノベーション会計が自社に必要であると実証したので、次はイノベーション会計導入を開始する前に必要な3つの事項を確認してほしい。
いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回のブログは「ムーンショットは素晴らしい、しかしムーンショットを支える宇宙開発プログラムはあなたの会社にありますか?イノベーションシステムの構築(“MOONSHOTS ARE NICE, BUT DO YOU HAVE A SPACE PROGRAM? BUILDING AN INNOVATION SYSTEM.”)」という、イノベーションの戦略、実行、管理で構成されるイノベーションシステムについてのお話です。
WRITER
- 渡邊 哲(わたなべ さとる)
- 株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師
東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。