55種類のビジネスモデル・パターンカード:アドオン
("BMI´s 55 pattern cards: Add-on")

イノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI
Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「55種類のビジネスモデル・パターンカード:アドオン("BMI´s 55 pattern cards:
Add-on")」についてのお話しです。世の中のすべてのビジネスモデルを55種類に類型化したパターンカードをもとに新たなビジネスアイデアを創造するアイデア創造法は、ビジネスモデル・ナビゲーター手法の大きな特徴の一つです。今回は55種類の中でも製品体系と価格体系を工夫することで市場における独自のポジショニングを確立する、アドオンのビジネスモデルに関するブログをご紹介します。アドオンのビジネスモデルは、製品体系と価格体系を工夫することで市場における独自のポジショニングを確立するというモデルです。では本文をお楽しみください。

55種類のビジネスモデル・パターンカード:アドオン
("BMI´s 55 pattern cards: Add-on")

2017年8月4日
55種類のビジネスモデル・パターンカード:ソリューションプロバイダー(BMI
Lab社ウェブサイト
のブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)

パターンの説明
このビジネスモデルでは、中核製品やサービスを競争力のある価格で提供し、付随する多数の追加オプションで最終価格を押し上げる。したがって最終的には、顧客は当初の想定よりも多くの費用を支払うことになるが、その顧客特有のニーズを満たす各種オプションの恩恵を受けられる。このパターンには、非常に洗練された価格設定とマーケティング戦略が必要である。通常は顧客を引き付けるために、中核製品やサービスを宣伝し、かつ非常に低価格で提供する。今日では通常、顧客はインターネット・プラットフォームで競合製品の価格を比較するため、顧客が追加のオプション料金を支払うのは最初に選択した企業のみという勝者総取りの市場において、このビジネスモデルを使用する企業各社は激しい価格競争を繰り広げる。

このビジネスモデルによる顧客のメリットは、カスタマイズ可能な点である。追加オプションの料金を支払うかどうかはユーザー次第だが、購入した製品にオプションを追加することで、自分の好みやニーズに応じた、より良い製品やより良いサービスを享受できる。最終的に、オプションを追加した完成品の料金が、似たような競合製品の料金よりも高くなる可能性もある。

ここでビジネスとして重要な点は、最大数の顧客に対して最大の限界効用をもたらす各種機能を品揃えすることだ。そうすれば、顧客は各製品の中核機能やサービスを出発点として、製品が自分に最適の使用感になるまで好みのアドオンを選択できる。

【アドオンビジネスモデルの活用例】

このビジネスパターンは、個々の顧客のニーズが大きく異なり、製品やサービスを異なるバージョンに分割するだけでは大多数の顧客に最適な価値提供を十分に実施できないような、セグメント化が難しい市場において特に有用だ。
アドオンモデルは、非常に多くの業界で展開されている。航空会社、自動車メーカー、ソフトウェア会社の業界では一般的に、この方法で価値を創造し、収益をあげている。アドオンのビジネスモデルの例をいくつか見てみよう。

  • 1.1985年に設立された欧州最大の格安航空会社であるライアンエアーは、他の多くの航空会社が模倣した積極的な価格戦略で非常に有名だ。同社のアイデアは非常にシンプルだ。同社は、食事や飲み物、優先搭乗、旅行保険、追加手荷物など、通常の航空券に含まれるすべてのサービスを除外して航空券の価格を大幅に引き下げ、除外したサービスを格安航空券へのアドオンとして販売している。実際にこの戦略は格安航空ビジネスの普及に貢献し、何百万人もの人々がより頻繁に飛行機に乗れるようになり、何百万人もの新規顧客で市場全体が拡大した。
  • 2.このモデルは、顧客ごとにカスタマイズした車を提供しているメルセデス・ベンツ、レクサス、BMWなどの高級車メーカーに特に大きな利益をもたらし、利益率を最大50%、あるいはそれ以上増加させている。他にハーレーダビッドソンなどもこのビジネスモデルを踏襲し、低価格なバイクを導入してエントリー製品を創出することで幅広い顧客基盤を構築し、収益性の高いカスタマイズ商品や付随サービスを販売するための礎としている。
  • 3.さらに、このビジネスモデルはソフトウェア業界でも広く使われている。B2BでもB2Cでも多くの企業が、中核ソフトウェアとは別に様々な機能を顧客に販売している。これらの追加機能によってサービス提供の範囲が大幅に拡張され、さらにニーズに合わせてユーザーはソフトウェアを自分で設定変更できる。

【アドオンビジネスモデルの活用タイミングと活用方法】

よって、このビジネスモデルを適用する際には、次の2つの質問に答える必要がある。

  • 1.基本製品を非常に競争力のある価格で提供し、さらなるアドオンサービスを提供可能か?
  • 2.顧客を自社の中核製品で囲い込み、自社からだけアドオン製品を購入してもらうようにできるか?

両方の質問の答えがイエスであれば、おそらく自社のビジネスをアドオンのビジネスパターンで革新できる。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回は、「複雑さを増す世界における事業課題に対処するための6つの原則("6 Principles to Deal With Business Challenges in a Complex
World")」という、VUCAと呼ばれる変化の激しい世界における企業の行動指針に関するブログ記事をご紹介予定です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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