オープンイノベーションの測定:スタートアップ投資の測定

イノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。
今回も書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏の最新書籍『The Innovation Accounting』に関するブログ記事をご紹介します。
同書の日本語版『イノベーション・アカウンティング』を昨年10月5日に出版しました

今回は「オープンイノベーションの測定:M&Aの測定(”Measuring Open Innovation: measuring M&A”)」という、スタートアップとのパイロットプロジェクトに関する取り組みを如何に測定するかについてのお話の第3回です。では本文をお楽しみください。

オープンイノベーションの測定:スタートアップ投資の測定
~スタートアップ協業の評価方法(3)~

2021年12月15日  ダン・トマ氏
オープンイノベーションの測定:スタートアップ投資の測定
ダン・トマ氏が"The Innovation Accounting bookウェブサイト"に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)

本シリーズのここまでのブログ記事で、大企業がスタートアップとのオープンイノベーションに取り組む際に4種の形態があることを解説し、無償あるいは有償のパイロットプロジェクトの測定方法、及びスタートアップ買収の測定方法をそれぞれ見てきました。

今回は、オープンイノベーションの3つ目の形態として、大企業の間で最も人気のある取り組みの一つであるスタートアップ投資、いわゆるコーポレートベンチャーキャピタルの取り組みを見てみましょう。スタートアップ投資の取り組みは大企業の間で非常に人気であり重視されているため、多くの企業がスタートアップ投資の専業組織を自社からスピンアウトする形で設立しています(例:Wayraドイツテレコム・キャピタルパートナーズインテルキャピタルグーグルベンチャーズ等)。

それでは、スタートアップ投資について、需要段階、実施段階、成果段階の各段階で追跡可能な指標を見ていきます。

需要段階のスタートアップ投資プロジェクトの測定:

スタートアップ投資の需要段階では、企業が以下の活動実績指標を追跡することをおすすめします。

  • 一定の期間中に提案を受けたスタートアップ投資の提案数
  • 一定の期間中に候補先に提案したスタートアップ投資の提案数
  • 一定の期間中の1件のスタートアップ投資候補の獲得までの平均費用(スタートアップ協業チームの旅費や関連イベントへのスポンサー費用を含む)
実施段階のスタートアップ投資プロジェクトの測定:

スタートアップ投資の実施段階では、企業が以下の活動実績指標を追跡することをおすすめします。

  • 一定の期間中に実施に至ったベンチャー投資案件数
  • 一定の期間中の全提案数のうち実施に至ったベンチャー投資数の比率
  • 一定の期間の投資金額の合計
  • 一定の期間の1件当たりの平均投資金額
  • 一定の期間にベンチャー投資で獲得した平均株式シェア
  • 事前合意したベンチャー投資のロードマップを基準とした進捗状況
  • 事前合意した目標に対する進捗状況
成果段階のスタートアップ投資プロジェクトの測定:

スタートアップ投資の成果段階では、企業が以下の結果指標を追跡することをおすすめします。

  • 一定の期間におけるベンチャー投資1件を完了するまでの平均費用(需要段階、実施段階の費用を含む)
  • 一定の期間に投資の結果として生み出された新たな売上
  • 一定の期間における新規売上/コスト比率(ベンチャー投資のトータル費用には担当者の人件費など社内費用を含む)
  • 一定の期間における資産価値上昇
  • 一定の期間における資産価値上昇/コスト比率(ベンチャー投資のトータル費用には担当者の人件費など社内費用を含む)
  • 個別の協業ごとの成果指標:個々のベンチャー投資で異なる可能性が高く、協業開始前に相互に合意することが必要(例:時価総額など)

次回はスタートアップ協業によるイノベーションプロジェクトの指標の最終回として、残り一つの協業形態の指標をご紹介します。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回はスタートアップとの協業プロジェクトの取り組みを如何に測定するかについてのお話の最終回です。「オープンイノベーションの測定:共同事業の測定("Measuring Open Innovation: measuring joint ventures")」という、スタートアップとの共同事業に関する取り組みを如何に測定するかについてのお話です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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