オープンイノベーションの測定:無償及び有償パイロットプロジェクトの測定

イノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。
今回も書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏の最新書籍『The Innovation Accounting』に関するブログ記事をご紹介します。
同書の日本語版『イノベーション・アカウンティング』を本年10月5日に発売開始しました。

今回は「オープンイノベーションの測定:無償及び有償パイロットプロジェクトの測定("Measuring Open Innovation: measuring free and paid pilots")」という、スタートアップとのパイロットプロジェクトに関する取り組みを如何に測定するかについてのお話です。では本文をお楽しみください。

オープンイノベーションの測定:無償及び有償パイロットプロジェクトの測定
~スタートアップ協業の評価方法(1)~

2021年11月14日  ダン・トマ氏
オープンイノベーションの測定:無償及び有償パイロットプロジェクトの測定
ダン・トマ氏が"The Innovation Accounting bookウェブサイト"に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)

誤解しないでいただきたいのは、スタートアップとの協業は一方的なものではないことです。双方に有益でなければ、効果的に機能しません。したがって、企業とスタートアップの両方の最高経営責任者が、イノベーションの実現という共通の戦略目標を持ち、同時にそれぞれの企業を成長させ、競争力を高め、収入を生み出すことが重要です。

これから一連のブログ記事として、スタートアップ協業の代表的な4種の形態とそれぞれを測定する方法を紹介してまいります。まず今回は、無償あるいは有償のパイロットプロジェクトという形態でのスタートアップ協業を測定する方法をご紹介します。

スタートアップ協業プロジェクトを適切に管理、定量評価するために重要なのは、まずは協業施策の大枠レベルで何を定量評価する必要があるかを理解し、そのうえで各パラメーターをそれぞれ協業の種別ごとに適用することです。経験上、スタートアップとの協業施策を分析する際には、ファネルで可視化することをおすすめします。ファネルの分割の仕方はさまざまですが、ここでは一般的な以下の3つの段階で考えてみましょう。

需要段階:
ファネルの「需要段階」では、企業はスタートアップがどの程度積極的に自社との協業を求めているのか、またその逆に自社はどうかを分析します。

実施段階:
ファネルの「実施段階」では、進行中の協業を定量評価します。これにより、企業とスタートアップの双方は、進捗状況や将来の成果予測についての現在情報を得られます。

成果段階:
ファネルの「成果段階」では、完了済みの協業が企業にもたらした効果を追跡します。

それでは、無償あるいは有償のパイロットプロジェクトについて、需要段階、実施段階、成果段階の各段階で追跡可能な指標を見てみましょう。

需要段階の有償および無償のパイロット・プロジェクトの測定:

パイロット・プロジェクトの需要段階では、企業が以下の活動実績指標を追跡することをおすすめします。

  • ・一定の期間中に提案を受けた有償または無償パイロット・プロジェクトの協業提案数
  • ・一定の期間中に候補先に提案した有償または無償パイロット・プロジェクトの協業提案数
  • ・1回のデモ実施までの平均費用(スタートアップ協業チームの旅費や関連イベントへのスポンサー費用を含む)
実施段階の有償および無償のパイロット・プロジェクトの測定:

パイロット・プロジェクトの実施段階では、企業が以下の活動実績指標を追跡することをおすすめします。

  • ・全提案数のうちデモ実施に至った提案の比率(有償デモ/無償デモそれぞれ)
  • ・一定の期間にかかった費用(有償デモの場合)
  • ・一定の期間におけるデモ1件当たりの平均費用(有償デモの場合)
  • ・一定の期間に有償デモ/無償デモに投じた経営資源(例:時間投資)
  • ・一定の期間に有償デモ/無償デモに投じたデモ1件当たりの平均投入資源
  • ・事前合意したロードマップを基準とした進捗状況
  • ・事前合意した目標に対する進捗状況
成果段階の有償および無償のパイロット・プロジェクトの測定:

パイロット・プロジェクトの成果段階では、企業が以下の結果指標を追跡することをおすすめします。

  • ・開始したプロジェクトのうちパイロット・プロジェクト完了に至った案件の比率
  • ・一定の期間におけるデモ1件を完了するまでの平均費用(需要段階、実施段階の費用を含む)
  • ・個別の協業ごとの成果指標:毎回のデモで異なる可能性が高く、デモ開始前に相互に合意することが必要。(例:企業が開発したソリューションの新規顧客の利用開始時の準備時間を、スタートアップが保有する技術を導入することで低減するという目的で実施されるのであれば、追跡すべき結果指標は利用開始時の準備時間の削減量となります。他の例としては、コスト削減額、新規売上などがありえます。)
  • ・成果を得るまでの平均期間

次回以降はスタートアップ協業によるのこり3種のイノベーションプロジェクトの他の形態についての指標をご紹介します。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回もスタートアップとの協業プロジェクトの取り組みを如何に測定するかについてのお話です。2回目の次回は「オープンイノベーションの測定:M&Aの測定("Measuring Open Innovation: measuring M&A")」という、スタートアップ買収に関する取り組みを如何に測定するかについてのお話です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」を共訳/監訳。

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