ムーンショットは素晴らしい、しかしムーンショットを支える宇宙開発プログラムはあなたの会社にありますか?イノベーションシステムの構築(“MOONSHOTS ARE NICE, BUT DO YOU HAVE A SPACE PROGRAM? BUILDING AN INNOVATION SYSTEM.”)

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みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。
今回も書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏の最新書籍『The Innovation Accounting』に関するブログ記事をご紹介します。
同書の日本語版『イノベーション・アカウンティング』を2022年10月5日に発売開始しました。

今回は、「ムーンショットは素晴らしい、しかしムーンショットを支える宇宙開発プログラムはあなたの会社にありますか?イノベーションシステムの構築(“MOONSHOTS ARE NICE, BUT DO YOU HAVE A SPACE PROGRAM? BUILDING AN INNOVATION SYSTEM.”)」という、画期的なイノベーションを可能にするために会社に整備すべき仕組みや制度についてのお話です。では本文をお楽しみください。

「ムーンショットは素晴らしい、しかしムーンショットを支える宇宙開発プログラムはあなたの会社にありますか?イノベーションシステムの構築(“MOONSHOTS ARE NICE, BUT DO YOU HAVE A SPACE PROGRAM? BUILDING AN INNOVATION SYSTEM.”)」
~イノベーションを生み出すシステムとは?~

2023年4月19日  ダン・トマ氏
ムーンショットは素晴らしい、しかしムーンショットを支える宇宙開発プログラムはあなたの会社にありますか?イノベーションシステムの構築
(ダン・トマ氏が“OUTCOME社ウェブサイト”に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)

おそらくムーンショットという言葉はよくご存じだろう。もしそうでなければ、ムーンショットを一言でいえば、「偉大な意味をもたらす成果を期待される難しいあるいは膨大な費用の掛かるタスク」のことである。
「月ロケット打ち上げ」という響きの通りの難しさだが、自社事業にポジティブな影響を生み出す変革的な新規の事業アイデアの立ち上げは実際に達成可能だ。実際問題として、世界中のどの会社でも企業トップが十分な支援をするという条件のもとであれば、ムーンショットを実現可能だと我々は信じている。

しかし実際には、「我が社でムーンショットを実現可能だろうか?」と自問するのは誤りだ。問うべき質問は、「我が社にはムーンショットを支える「宇宙開発プログラム」はあるだろうか?」あるいは言い方を変えると、「自社ではイノベーションは繰り返し可能で持続的な事業活動か、それとも“一度限りの”アドホック的な形で実施されているだけか?」「イノベーションからの成果が次々と生まれてくるように、我が社は形作られているか?」である。

企業のムーンショットプロジェクト実現に必要なのは、単に素晴らしい事業アイデアとプロジェクトを支える一致団結した取締役レベルの支援だけである。

しかしながら、「宇宙開発プログラム」となると、はるかに多くのことが企業に必要となる。具体的には、イノベーション戦略、イノベーション実践、イノベーション統制、イノベーション文化、そしてイノベーション・リーダーシップで構成されるイノベーションシステムが必要だ。さらに、イノベーションシステムのすべての構成要素はそれぞれ連動し、かつすべてが十分成熟している必要がある。それが無ければ、イノベーションは自社事業にとって繰り返し可能で持続的な成長エンジンとはならないのだ。

イノベーション戦略だけがあり、だれ一人として実践に移さない企業を一瞬だけ創造してほしい。こんな会社はイノベーションから何の成果も得られないだろう。それとは正反対に、イノベーション実践だけが非常に成熟しており全く戦略がない企業は、その企業が本当にイノベーションによって達成したいこととは何の関係も無いことに対して、イノベーション投資がランダムに実施されかねない。


【イノベーションシステム・マップ】

したがって、たとえイノベーションシステムの構築が「経営幹部の肝いりのプロジェクト」を進めることよりも複雑だとしても、それこそが事業の成長と持続性を確実にする唯一の方法なのだ。

マイクロソフトを例に考えてみよう。最初のOS事業からオフィス365へ、そして最初のXbox360からMS Teamsへ、同社には次々とイノベーションを立ち上げる能力があるのだ。同社の「宇宙開発プログラム」が機能している証拠がほしければ、同社の株価推移をみることだ。


【マイクロソフトの株価推移】

したがって、あなたの会社で次にある一つの(イノベーション)プロジェクトにリソースを過剰投入する際には、あるいは社内開発力に頼る代わりに外部パートナーに新事業立ち上げの過剰投資をする際には、経営リーダー層に一つのプロジェクトでは自社の運命は変わらないことを提言してほしい。そして、イノベーションの持続性を達成する唯一の方法はイノベーションシステム構築に投資することなのである。

正直に言おう。デジタルエコノミーで多くの企業が苦戦しているという現実と、デジタル化の完了、技術の変化、経済上の要因、顧客動向の変化とは対して関りがなく、それよりも状況に適切に対応する能力が欠けていることに密接に関係しているのだ。

企業に能力が無いか、あるいは企業のイノベーションシステム、イノベーション組織、イノベーション文化がどこかおかしいか、のどちらかだ。ほとんどの場合、問題のありかは、経営リーダーの組織設計か組織経営に根差している。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。

次回のブログは「イノベーションの目標設定(“SETTING GOALS FOR INNOVATION”)」という、イノベーションに関する目標設定をする際の進め方や注意事項についてのお話です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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