サーキュラーエコノミー入門
(“Introduction to the circular economy")

イノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「サーキュラーエコノミー入門(“Introduction to the circular economy")」という、環境破壊を生み出す大量生産・大量消費のリニアエコノミーからサステナブルなサーキュラーエコノミー(「循環型経済」)に移行することについてのお話しです。ビジネスモデル・ナビゲーター手法をサーキュラーエコノミーに適用することで、サーキュラーエコノミーを起点とした新たなビジネスモデル構築を実現します。では本文をお楽しみください。

サーキュラーエコノミー入門(“Introduction to the circular economy")

2020年10月22日
サーキュラーエコノミー入門(“Introduction to the circular economy")
BMI Lab社ウェブサイトのブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)

近年人類はいまだかつてない環境問題に直面しており、これまでのリニアなやり方で運営されていたビジネス分野における画期的なソリューションが新たに必要とされている。このブログ記事では、どのようにして我々のエコシステムが徐々に破壊されてきたか、サーキュラーエコノミーがこれらの問題を部分的に軽減するためにどのように役立つのか、そしてサーキュラーエコノミーという新たなビジネスモデルに移行することに伴う制約とは何か、を紹介したい。

エコシステムの破壊に関する課題とその原因

我々の住む地球環境が近年直面している様々な問題については皆さんが既によくご存じの通りである。

- 大気中の二酸化炭素の量は記録的なレベルに達し、2020年には過去最大の412ppm(100万粒子あたりの粒子数)となり、産業化時代の初期の280ppmに比べて47%もの増加となっている。
- 廃棄物が我々のエコシステムを汚染している。全世界で毎日70億トンもの廃棄物が生成されている。
- 天然資源は地球環境から過剰に採取されている。

スイスでは地球環境から安全に抽出可能な容量の上限をすでに超えてしまっており、全世界のほぼすべての国が同じ状況である。年間の抽出可能容量の上限に達したことを示すアース・オーバーシュート・デイは年々早まっており、今年は8月22日であった。その結果が洪水から社会インフラの問題まで多岐にわたる環境破壊という高価な代償である。環境を回復するための費用は顕在化しており、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念であるプラネタリー・バウンダリー(地球環境の限界点)を超えてしまっている。

「サステナビリティはメガトレンドでなく、生存の必須要件である。」
独シンパテックス・テクノロジーズ社リュディガー・フォックス博士

ビジネスモデルという観点で見たとき、サステナビリティはメガトレンドであると誤解されることが多いが、大局的には単なるメガトレンドよりもはるかに重大な意味を持つ。活発に変化している世界において、サステナビリティは未来に起きうるできごとでなく、実際に対処すべき必須要件と言える。

今日の経済システムはどのように機能しているか?

現状の経済システムやビジネスモデルは、リニアな形で構成されている。すなわち、天然資源を採取し、製品を製造し、それを利用し、最後に廃棄する。


このようなリニア経済では、環境に負の影響を与える負の外部性が数多く生み出される(例:熱帯雨林の伐採と生物多様性の破壊、二酸化炭素排出による環境汚染、生物環境への廃棄物やマイクロプラスチックの排出など)。これらの負の外部性はすべて、「設計上の廃棄(Waste by Design)」と呼ばれる。実は、廃棄物とは技術の発展に伴い新たに発明されたものである、それというのも工業化の前には廃棄物という概念すらなかったのだから。それに加えて、現状のビジネスモデルでは、資源の採取と製造が経済成長に紐づいている。最後に重要な点として、これら製品の大半は石油燃料に大きく依存している。これらすべての外部性が、地球のエコシステムのバランス及び未来の世代のための持続性に重大な影響を及ぼすのだ。

ソリューションとしてのサーキュラーエコノミー

この生命を脅かす深刻な問題に対処するソリューションの一つがサーキュラーエコノミーである。最も重要な変化は、これまで製品の製造のために使われてきた天然資源をサーキュラーエコノミーで再利用可能にすることによる、天然資源の回復に関するものだ。リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーに移行することで、物質はそのライフサイクル全般にわたって最大限に利用可能な状態を維持できる。サーキュラーエコノミーは自然界のエコシステムにより類似した仕組みである、なぜなら自然界のエコシステムには廃棄物はないからだ。また、サーキュラーエコノミーにおいては、製品の再利用がリサイクルよりも望ましく、なぜならリサイクルによる製品の製造には多くのエネルギーや労力が費やされ、それによってさらなる負の外部性を生み出してしまうからだ。製品が有効に長く利用されれば利用されるほど、消費者にとっても地球環境にとってもより多くの恩恵を得られるのだ。

サーキュラーエコノミーのもう一つの重要な特徴は、デザイン、サービス、提供方法への注力だ。サーキュラーエコノミーでは、所有権はサービス提供者、例えば企業が保持し続け、そうすることで物質の利用や回収の効率を高めることができる。常に完全に実施可能ではないものの、このビジネスモデルでは資源の利用と経済成長を分離する。これが、地球上の社会全体のサステナビリティ―に影響を与える主要な特徴の一つである。しかしながら、すべての物質とすべての製品をループとして完全に循環させ続けるというのは非現実的である。依然として廃棄物は生成されるが、目標は人間の手に負える範囲にその量を制限することだ。

企業各社が積極的に責任を負うような働きかけがなされるべきである。持続可能性のある社会を創造するという観点からは、特に企業は各社のビジネスモデルをリニアからサーキュラーに変えることで大きな影響を与えることが可能なのだ。企業各社は、顧客ニーズや企業に対する顧客の期待値が変化していることを捉えて、現状の事業活動やその手法、及び現在の環境を活かすことが可能なのだ。


サーキュラーなソリューションに移行することに伴う制約

現時点でそれほど多くのサーキュラーソリューションを目にしない理由は複数ある。多くの企業においては、社員の大半にはサステナブルなサーキュラービジネスの事業活動やソリューションの意味合いが十分に伝えられていない。社員個人のプライベートな生活においてはよりサステナブルな行動をとっているが、それが仕事とは切り離されていることが多い。そのことについて社員に伝えるとともに適切な知識を与えて変化を開始することが重要だ。

二つ目に大きな障害はサステナブルなプロジェクトの多くで収支計画、収益モデル、あるいは適切な収益性が欠けることだ。その結果、しばしばプロジェクトが広告宣伝やチャリティの一環だと捉えられてしまう。しかしながら、これらのプロジェクトを持続可能で運営可能かつ収益性のある事業として成立させることが可能であることは専門家によって立証されている。もう一つの課題は、サーキュラーソリューションの複雑性で、社内外の複数部門の支援が必要なことだ。どんな企業も自社単独でサーキュラーエコシステム全体を網羅的に構築することは不可能であるため、提携関係の構築が非常に重要となる。

それ以外では、別の課題として時間軸がある。現状、企業は非常に速いペースの環境下で運営されている。しかしながら、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルは実現までに長い時間を要するのだ。製品がサイクル全体をたどっていくのに数年はかかり得る。財務的な観点からはこれは難題であり、したがって自社あるいは親会社から適切な動機付けがなされる必要がある。

それに加えて、バリューチェーン内における企業の位置づけが行動を取る妨げになることも多い。もし自社の事業が材料メーカーであったら、廃棄に関する責任を感じる必然性がないからだ。廃棄物回収企業は再利用しやすい製品デザインを押し進める立ち位置に自社があるとは思わないことが多い。サーキュラーエコノミーを可能にするために規制や法律が必要であり、その場合には政治的な課題にもなる。

まとめ

サーキュラーエコノミーは、人類及び地球環境のウェルビーイングの向上に寄与する可能性を持つ。持続可能性をもつこの新たなモデルの推進役となるのは企業各社や政府・自治体だけではない。市場環境におけるこの大きな転換は、顧客のニーズや要望によってこそ即座に起き得るのだ。収益性があり、説得力を持ち、かつサステナブルなソリューションを生み出すことは可能であり、それは企業の財務面だけでなく、地球環境の持続性の面でも、それと同時に従業員のモチベーションの面でも有効に機能する。仕事の価値が高ければ高いほど、人類全体がより幸福になるのだ。サーキュラーエコノミーは、地球環境にも人類にも真にウィンウィンの状態をもたらすと言える。

サーキュラー・ビジネスモデルについての追加情報は、サーキュラー・ナビゲーターの紹介ページ及びサーキュラーエコノミーのビジネスモデル・イノベーションに関するホワイトペーパーを参照頂きたい。

参考文献


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。

次回は、「サーキュラー・ナビゲーター手法で新たなビジネスモデルを実現する(“Implementing New Circular Business Models with the Circular Navigator Methodology")」という、サーキュラーエコノミーを起点としたビジネスモデル・イノベーションの実現手法に関するブログ記事をご紹介予定です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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