コロナ禍が銀行のビジネスモデルのデジタル・トランスフォーメーションを加速する("COVID-19: The digital transformation catalyst of banking business models")

イノベーション, ビジネスモデル・新規事業創出

みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「コロナ禍が銀行のビジネスモデルのデジタル・トランスフォーメーションを加速する("COVID-19: The digital transformation catalyst of banking business models")」という、コロナ禍をきっかけとした金融業界のデジタル・トランスフォーメーションの加速についてのお話しです。では本文をお楽しみください。

コロナ禍が銀行のビジネスモデルのデジタル・トランスフォーメーションを加速する("COVID-19: The digital transformation catalyst of banking business models")

2020年11月5日
コロナ禍が銀行のビジネスモデルのデジタル・トランスフォーメーションを加速する(BMI Lab社ウェブサイトのブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)

銀行業界は、おそらくこれまで経験したことのないペースと重要性を伴う変化に直面している。コロナ禍は、資産取引量と関連手数料の大幅な増加という形で一部の銀行にプラスの影響を与える一方で、変革を促す触媒としても機能している。コロナ禍は、キャッシュレス社会に向けて消費者の行動を大幅に変えると想定されている。ネットやモバイルによるオンライン・サービスと店舗やATMでのオフライン・サービスの双方を利用するハイブリッド・バンキング顧客の増加傾向は続いている。

構造変化

銀行本来の経済機能である(1)決済取引、(2)信用取引、(3)資産管理は、個別の専門特化サービス事業者を通じて提供される傾向が高まっており、将来的には、利用者がすべての機能を1つの銀行に頼ることはなくなる可能性があり、銀行としてはトータルサービスを提供するという現状のビジネスモデルを継続しつつ、専門特化型のサービス提供を模索するという、両面的な事業展開の必要性を真剣にとらえる必要がある。

変化の原動力と新たなプレイヤー

クレディ・スイスとUBSの合併に関する話題や、銀行業界における最近の様々な出来事は、業界が直面している構造的な変化を示している。例えば、フィンテック企業のRevolut社のような挑戦者としての位置づけにあるネオ・バンク各社は、デジタル・ファーストの各種サービスを顧客向けに提供することで戦いを仕掛け、従来からのリテール銀行にプレッシャーをかけている。Revolut社への対応として、例えばクレディ・スイスは最近、CSX(デジタルバンク)の立ち上げを発表した。銀行業界において、顧客への販売チャネルはオンラインに移行している。デジタルでテクノロジー主導のビジネスモデルが新しい標準になりつつあるのだ。

新たな競争相手

伝統的な欧米の既存の金融機関は、ネオバンクとの競争と同時に、中国発の新たな競争相手との競争にも直面している。アント・フィナンシャルあるいはアリペイとしても知られているアントグループは、その中でも最も事業価値の高いフィンテック企業と考えられている。アントグループは、AI、クラウド、その他のテクノロジーを驚くほどに活用し、完全にデジタル化した消費者融資やクレジット認証ソリューションを実現している。金融アナリストたちは、予定されているアントグループの上場が世界最大のIPOになる可能性があると主張している(訳注:2020年の原文執筆当時)。

同社がIPOによる流動性を、新しい市場、特にヨーロッパでの影響力拡大に利用することも予想されている。一方で、J.P.モルガンは最近、同社のオープンソース・ブロックチェーン・プラットフォームであるQuorumを ConsenSys社に売却するとともに、ConsenSys社に2,000万ドルを投資した。このことから、J.P.モルガンはさまざまなユースケースにおけるブロックチェーンの活用をさらに探求していくことが想定されている。

大きな影響

事実として、従来型の銀行がすでにデジタル化を深化させている一方で、テクノロジー企業からの挑戦も激化している。新しいテクノロジーの利用は、顧客にとっての価値を高めるだけでなく、社会や環境にも大きなインパクトをもたらす可能性がある。

まとめ

我々はイノベーションはオープンな環境でより効果的になると強く信じており、デジタル変革が銀行のビジネスモデルに与える影響について、Microsoft社と共同で短い考察レポートを作成した。

今回の概要記事では、新たなビジネスモデルの機会を模索する必要性が高まっている背景と、金融機関がテクノロジー主導のデジタル・ビジネスモデルの模索をどのように実行し、加速するかについての方向性を紹介した。

より詳細な情報については、こちらからレポートをダウンロードしてほしい。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回は、「簡単かつ迅速にビジネスモデルを検証するための150以上のツール群("150+ Tools to Easily and Quickly Test Your Business Model")」という、ビジネスモデル検証のための様々なツールに関するブログ記事をご紹介予定です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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