エコシステムを活性化せよ(Activate your Ecosystem!)

オープンイノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。『OPEN INNOVATION WORKS』の著者であるダイアナ・ジョセフ氏、ダン・トマ氏、及びエスター・ゴンス氏のブログ記事をご紹介します。

今回は、「エコシステムを活性化せよ(Activate your Ecosystem!)」という、従来型チャネルだけに依存せず、多様な組織や人々がつながるイノベーション・エコシステムを通じて、有望な初期スタートアップを発掘することの重要性についてのお話です。では本文をお楽しみください。

エコシステムを活性化せよ(Activate your Ecosystem!)

2026年5月8日
ダイアナ・ジョセフ氏
エコシステムを活性化せよ
(書籍の著者であるダイアナ・ジョセフ氏、ダン・トマ氏、エスター・ゴンス氏が"OPEN INNOVATION WORKSウェブサイト"に掲載したブログ記事を、著者らの許可を得て翻訳、掲載しています)

「私はここにいるよ。みんなどこにいるの?」

ある企業のイノベーション担当リーダーが、かつて私のもとに厄介な悩みを抱えて相談に訪れました。彼は、ごく初期段階にあるスタートアップだけと連携したいと考えていたのです。スタートアップ側の技術開発の方向性が、自社のニーズに合わせて柔軟に定められる段階にあるうちに、自社の研究者たちをその取り組みに関与させたい――それが彼の狙いでした。

しかし、どういうわけか、彼が見つけられるスタートアップは、いずれもすでに事業基盤が固まり、資金も調達済みで、開発の方向性もすでに定まっている企業ばかりでした。彼の求める条件からすると、あまりにも成熟しすぎていたのです。一体、どこに行けばこの分野における初期段階のプロジェクトが見つかるのだろうか――。あれほど探し回ったというのに、なぜ高い潜在能力を持つパートナー候補たちは、自分の探索の網にまったく引っかかってこないのだろうか、と彼は不思議に思っていました。

確かに不可解な話です。

私のクライアントは、自分たちのスタートアップの探し方に問題があると考えていました。しかし、実際に彼らが抱えていたのは、エコシステムの問題だったのです。

つまり、私が言いたいのは、こういうことです。大企業は通常、決まったチャネルを通じてパートナーを探します。例えば、自社がリミテッド・パートナー(LP)として出資しているベンチャーキャピタルに相談したり、PitchBookやCrunchbaseといったデータベースで検索したり、あるいはY Combinatorのようなアクセラレーターに聞いてみたりします。確かに、こうしたチャネルは非常に強力であり、優れたスタートアップを見つけ出すことができるでしょう。しかし、これらのチャネルはすべて、いわば世界をベンチャー投資という「同じ眼鏡」で見るように設計されていると言えます。そのため、結果として同じような創業者たち(少なくとも、同じタイプの創業者たち)ばかりが浮かび上がってくる傾向があるのです。

それは、車の鍵をなくした酔っ払いについての昔ながらのジョークに少し似ています。車の鍵をなくした酔っ払いが、実際には駐車場の反対側の暗がりに落としたにもかかわらず、そこだけ明るいからという理由で街灯の下ばかりを探し回っているため、鍵が一向に見つからない――そんな話です。

私の友人が探しているような初期段階のスタートアップは、いわば『駐車場の暗がり』に存在しています。従来のチャネル経由では、そうしたスタートアップはまず見つかりません。彼らはまだごく初期段階にあるため、大企業の正面玄関から自由に出入りできるような“フリーパス”を持っていません(つまり、有力な投資家や大企業の顧客をまだ獲得していないのです)。また、裏口から中へ導いてくれるような人脈やコネも持っていないのが一般的です。

答えを模索している大企業の多くは、自社が抱える最重要課題に対する膨大な数の『潜在的な解決策』のうち、その大部分を見落としてしまっています。そうした課題の解決に貢献できるはずのスタートアップの多くは、光の当たらない暗闇の中に埋もれたままです。そして何とかコンタクトを取ろうとして、こちらが中身を評価する時間もないような売り込みメールを次から次へと送り続け、あなたや私の受信トレイを溢れかえらせているのです。

このような過度に単純化されたエコシステムでは、提携先を求める企業各社が、結局はごく限られた一握りの成熟したスタートアップをめぐって競争することになってしまいます。企業各社にとって決して望ましい状況ではありませんし、現状の標準プロセスに当てはまらないスタートアップにとっては、非常に不利な状況です。そして、本来であれば得られるはずの早期段階での協業の力も、まったく活用できなくなってしまうのです。

複雑なエコシステムこそが、あなたの求めるものをもたらします。

実のところ、あなたが知っておくべきすべての人を見つけてくれる仲介者やスカウトは世界中のどこにも存在しません。また、たとえチャネルの数を増やしたとしても、それらすべてのチャネルが同じ仕組みで機能しているようでは、何ら助けにはならないのです。

あなたに必要なのは、豊かで活発な相互交流が営まれるイノベーション・エコシステムです。企業が弁護士、非営利団体、自治体、製造業者、大学、そしてその他可能な限り多くの組織と意図的に結びつくとき、接点の数はわずか3つではなく、1000へと一気に広がることになります。そうなれば、あなたが出会いたい相手を見つけ出すための経路が数多く生まれるだけでなく、相手側からあなたにたどり着くための経路もまた、数多く開かれることになるのです。

実は、あなたの会社はすでに、こうしたつながりを数多く持っています。ただ、それらが一対一の関係によるシンプルなエコシステムとして個別に機能しているに過ぎないのです。もし、それぞれの相手が持つ人脈や関係性のネットワークを互いに覗き込みながら、それらのつながりをより意図的に結び合わせていったらどうでしょうか。さらに言えば、あなたの地域や業界には、まだ十分に活用できていない活発な起業家エコシステムが、すでに存在しているかもしれません。信じてください。そうした場では、大手企業の参加者はいつでも歓迎されるはずです。

従来のチャネルは引き続き活用しつつ、それに加えて、ミートアップに顔を出したり、大学の研究を支援したりすることも大切です。また、イベントを企画し、社内の研究者やエンジニア、ビジネスリーダーたちに、友人や社外の同僚を誘って参加してもらうよう呼びかけてみてください。質問を投げかけたり、可能な範囲で回答を提供したりすることも大切です。貢献する側にも、また何かを依頼する側にも回ることで、あなたが実際にコミュニティに関わる信頼できる存在であることを印象づけることができるでしょう。

私は同僚と一緒に、彼の担当業界に属する他の企業各社と協力し、合同でイベントを企画・開催しました。参加したスタートアップの一部は、従来型のチャネルを通じて見つけたものであり、その多くは彼にとってすでに馴染みのある顔ぶれでした。しかし、ごく一部には、私たちと面識のある人物の、さらにその知人の、またその知人……といった具合に、エコシステムが織りなす網の目のようなつながりを通じて招待を知り、参加してきたスタートアップも含まれていました。

複雑な関係性をもつエコシステムが存在するということは、パートナー探しをするうえで、はるかに多様な視点を持てるようになることを意味します。あるいは、鍵をなくした酔っ払いのジョークに例えるならば、それはつまり、足元を照らす街灯が格段に増え、暗がりの死角が大幅に減るということなのです。


いかがでしたでしょうか。弊社では、シリコンバレーや欧州のスタートアップとのアライアンスによるオープンイノベーションの支援サービスである「テクノロジーソーシング」サービスを日本企業向けに提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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