ミドルマネージャー層がイノベーションを阻害していないかどうかを知るためのイノベーションアカウンティングの5つの指標(“Five Innovation Accounting Indicators that are Telling you if your Middle Managers are Stifling Innovation”)

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みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。
今回も書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏の最新書籍『The Innovation Accounting』に関するブログ記事をご紹介します。
同書の日本語版『イノベーション・アカウンティング』を2022年10月5日に発売開始しました。

今回は、「ミドルマネージャー層がイノベーションを阻害していないかどうかを知るためのイノベーションアカウンティングの5つの指標(“Five Innovation Accounting Indicators that are Telling you if your Middle Managers are Stifling Innovation”)」という、イノベーションKPIについてのお話です。では本文をお楽しみください。

「ミドルマネージャー層がイノベーションを阻害していないかどうかを知るためのイノベーションアカウンティングの5つの指標(“Five Innovation Accounting Indicators that are Telling you if your Middle Managers are Stifling Innovation”)」
~イノベーション投資の意思決定を評価するKPI~

2022年11月1日  ダン・トマ氏
ミドルマネージャー層がイノベーションを阻害していないかどうかを知るためのイノベーションアカウンティングの5つの指標
(ダン・トマ氏が“The Innovation Accounting bookウェブサイト”に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)

企業におけるイノベーションの成功を左右する大きな影響力を中間管理職が持つことは定説である。業種を問わず、中間管理職層の行動がイノベーションを促進したり阻害したりする。

しかし指標がなければ、中間管理職層がイノベーションの障壁になっているのか後押ししているのかを、企業のリーダーが知ることは難しい。企業のイノベーション活動に中間管理職が及ぼしている影響を理解できれば、中間管理職層向けのイノベーション研修に投資したり、何等かのプロセスを変更したり、イノベーション文化の醸成に投資するなど、企業のリーダーが具体的なアクションを起こすことができる。

ここでは、中間管理職層が実際にイノベーションを推進しているかどうかを評価し、中間管理職層のパフォーマンスを測るために役立つ5つの指標を紹介したい。

1)意思決定に要する時間:中間管理職層の意思決定プロセスにおける効率はどうか?
中間管理職層は、企業のイノベーション戦略とイノベーション実行とをつなぐ役目を担っている。彼らはイノベーション戦略策定において発言権を持つ人々を代表している。また、中間管理職層は社内の「ベンチャーキャピタルファンド」として機能し、企業が開始した様々なプロジェクトに対する投資継続あるいは撤退の意思決定を任されている。

イノベーションチームが進捗と実験で集めた証拠についての発表をした後で、中間管理職がイノベーションプロジェクトに関する意思決定を下すために要する時間を測定すれば、中間管理職層がイノベーションの障害になっているかどうかを理解するのに役立つ。

理想的には、イノベーションチームが進捗を報告したらその場で、継続、ピボット、あるいは中止の意思決定をするべきである。ここで遅延があれば、イノベーション費用やイノベーションチームのモラルに悪影響を及ぼす。

2)イノベーションの分布や推進対象となった事業アイデアの種類:中間管理職層は自社の成長や自社が破壊されるのを防ぐために役立つアイデアに投資をしているか?
予算の執行という形で、中間管理職にはどのプロジェクトを支援し、どのプロジェクトを無視するかを選ぶ自由度がある。当然ながら、どのプロジェクトに投資すべきで、どのプロジェクトに投資すべきでないかを意思決定するうえでイノベーション投資方針が役立つはずである。

リスク許容度の低い組織の中間管理職層は、革新的なイノベーションや破壊的なイノベーションでなく、継続的な改善のアイデアや漸進的なイノベーションの支持に傾きがちである。

リーダー層は、現時点のイノベーション・ファネルが将来の自社の事業ポートフォリオに反映されることを理解する必要がある。中間管理職層が支持するイノベーションプロジェクトの種類を観察すれば、一方で自社の将来がどうなるかを描きだすことができ、他方で現時点における自社のイノベーション文化はどうかを可視化できる。

銀行、通信、自動車、エネルギーなど、業種破壊が起きる恐れが高い業種で活動する企業については、中間管理職層が支持するイノベーションの種類を追跡監視することで、将来自社が破壊される可能性を測るための参考にできる。

3)事業アイデアの「成熟に要する時間」:自社の中間管理職はイノベーションの障害となっていないか?
意思決定を通じて中間管理職は事業アイデアが実行開始され、具体的な成果を生み出すまでに要する時間に直接的な影響を及ぼす。事業アイデアが生み出された瞬間から一定の成熟段階に到達するまでの時間を測定することで、中間管理職の意思決定の効率性を覗き見る手段にできる。

イノベーションチームが集めた反論不能な証拠を前にして事業アイデアを前進できないならば、その事業アイデアが企業の成長に寄与するまでに要する時間が長くなるという形でペナルティを課される。

事業アイデアが一定の成熟段階に達するまでに要する時間が長いほど、企業のイノベーション費用はかさみ、また企業がイノベーションに消極的だとみなされる可能性も高まる。事業アイデアが一定の成熟段階に達するまでに要する時間が長いことは、中間管理職にイノベーション投資方法の研修が必要だというフラグと言える。

4)ファネルのコンバージョン率:中間管理職層が効果的な意思決定をしているか?
実行開始された事業アイデアのうち成熟に達した事業アイデアの数を見ることで、中間管理職の下した意思決定の評価手段とできる。

もしイノベーションファネルのコンバージョン率が低ければ、中間管理職層が事業アイデアをあまりに多く「止めすぎている」ということかもしれない。多くの事業アイデアが止められていれば、企業のイノベーション費用も高くなる。イノベーション費用は単に事業アイデアの市場投入に要する費用だけでなく、企業のイノベーション活動全体に要する費用だからだ。

逆に、コンバージョン率が高ければ、中間管理職層が「止めている」事業アイデアの数が少なすぎて、結果的に広く薄くイノベーション投資をしている可能性がある。

5)新製品活力指数(NPVI):わが社の中間管理職層はイノベーションについて正しい意思決定をしたか?
長く利用されているイノベーション指標であるNPVIは、過去3年~5年の間に新規投入された製品から得られている現在の売上の比率を企業のリーダーに示す。この指標は、基本的にイノベーションプロセスがうまくいっているかどうかを可視化する。

意思決定を通して、中間管理職は書類上よさそうに見えるだけの事業アイデアを支持することもある。このような事業アイデアは(理由は様々だが)市場で失敗する。したがって、NPVIを追跡監視することで、中間管理職層の投資決定の質を評価できる。NPVIの数字が低ければ、中間管理職層がイノベーションについて正しい意思決定をしておらず、目立った変化をもたらすことのないプロジェクトや市場に導入してしばらくで失敗してしまうプロジェクトに投資していることを示している可能性がある。

質問 指標 実施可能なアクション
中間管理職層の意思決定プロセスにおける効率はどうか? 意思決定時間 ノベーション研修、イノベーションプロセスの再設計
中間管理職層は自社の成長や自社が破壊されるのを防ぐために役立つアイデアに投資をしているか? 投資分布 イノベーション文化の開発、インセンティブシステムの変更
わが社の中間管理職はイノベーションの障害となっていないか? 成熟に要する時間 イノベーション研修
中間管理職層が効果的な意思決定をしているか? ファネルのコンバージョン率 イノベーション研修
わが社の中間管理職層はイノベーションについて正しい意思決定をしたか? NPVI(新製品活力指数) イノベーション研修、イノベーションプロセスの再設計

※指標での発見事項に応じてアクションを実施する。

これらの指標はいずれも単独で使用すべきものではない。いずれの指標も完璧でなく、誤った結論を導いたり、つじつま合わせをされたりする恐れがある。しかしながら、複数の指標を組み合わせて利用することで、指標同士が互いに補完しあい、自社の中間管理職層がイノベーションを推進しているか、あるいは実際には自社を永久凍土に閉じ込めてしまっているのかを知ることができる。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。

次回のブログは「イノベーション管理のキャリアを積むのが良くない理由とその対策“WHY IS A CAREER IN INNOVATION MANAGEMENT A BAD IDEA. AND WHAT CAN YOU DO ABOUT IT”)」という、キャリアとしてのイノベーションについてのお話です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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