装置as a Service:ザンクトガレン大学のEaaSナビゲーター解説(“Equipment as a Service: Exploring the St. Gallen EaaS Navigator”)
みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。
今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。
今回のブログは「装置as a Service:ザンクトガレン大学のEaaSナビゲーター解説("Equipment as a Service: Exploring the St. Gallen EaaS Navigator")」という、工場やプラントその他の機械や設備を販売するのでなくサービスとして利用権を提供するビジネスモデルについてのお話しです。では本文をお楽しみください。
装置as a Service:ザンクトガレン大学のEaaSナビゲーター解説
2021年7月10日
装置as a Service:ザンクトガレン大学のEaaSナビゲーター解説(BMI Lab社ウェブサイトのブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)
Equipment as a Service(EaaS:装置 as a Service)型ビジネスモデルの普及が加速している。グローバルEaaS市場は2019年の220億米ドルから、2025年には1310億米ドルに拡大すると予測されている(2020年Wopata)。なぜこの市場は平均35%もの勢いで突然成長し始めたのか?機械産業分野の多くの大企業にとってEaaSは大きなパラダイムシフトなのだ。機械工業各社が次々と自社製品とサービスのバンドル提供や、プロダクトとサービスを一体化したシステムの提供を開始している。単に装置を販売するのでなく、包括的なソリューションを提供することで、これまで放置されていた顧客の課題を解決しているのだ。
定義 - Equipment as a Serviceとは何か?
Equipment as a Serviceとは、生産設備や機械を購入しなければ利用できないというのでなく、一定の利用料で機械を利用可能にするという提供形態を指す。そうすることで、最終顧客は事業リスクの一部をサービス提供者側に肩代わりさせることができ、資本的支出の大幅な節約になる(Brunner & Waschbusch, 2018年)。大きな設備投資(CAPEX)を求める代わりに、運営支出(OPEX)となるサブスクリプション契約や従量課金型による課金モデルが提供されている。顧客にとっては、EaaSによって事業リスクが低減され、キャッシュフローが改善し、生産性が向上する。
EaaSの狙いは、顧客に装置の活用に専念してもらうことだ。例えば、ボッシュの提供する「Heat(熱) as a Service(暖房システムを販売する代わりに熱を販売する)」を見ると、EaaSは設備運用全体を委託するアウトソース契約とはビジネスモデルが異なることがわかる。
ただし、デジタル化と自動化が進むにつれ、EaaSと完全なアウトソーシングの境界があいまいになってきている。ここで、EaaSが単に最近出現したのではないことに着目することが重要だ。1960年代の初めにさかのぼるロールスロイスの「ジェットエンジン as a Service」のように、同様のモデルは古くから使われている。しかし、近年のインターネット・オブ・シングス(IoT)の登場により、EaaSが追い風を受けているのだ。IoTが新たなサービスやサービス型のビジネスモデルを後押ししている。そのため、ほとんどの会社はEaaSのビジネスモデルを始めたばかりで、運営のコツや仕組みをこれから探らなければならない状態にある。
いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回は、『イノベーションの戦略(“The strategy of innovation")』というイノベーション戦略の重要性に関するブログ記事をご紹介予定です。
WRITER
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師