リーンスタートアップの実験チームに「法務」担当を入れた方がよい3つの理由

イノベーション, ビジネスモデル・イノベーション, 事業創出

明けましておめでとうございます。マキシマイズ代表の渡邊です。
今回も書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏のブログをご紹介します。

今回は「リーンスタートアップの実験チームに『法務』担当を入れた方がよい3つの理由(”3 reasons why having ‘legal’ on a lean startup experimentation team is a good idea”)」という、ビジネスモデルの仮説検証を進める際のチーム構成の話です。
イノベーション・システムは、大きくは「戦略」「実行」「管理」の3つで構成されますが、本ブログ記事で触れているリーンスタートアップの実験は、イノベーション「実行」の中心的な要素です。いかにうまく、安く、速く、実験サイクルを回せるかがキーポイントで、本ブログでは1つのコツとして「法務」との連携強化を解説しています。
シリコンバレーでも弁護士事務所との連携はスタートアップ成功の鍵を握る重要な要素で、私が運営に関わっているシリコンバレーの日米友好団体Japan Society of Northern Californiaでも、現地の弁護士事務所にスタートアップ向けのメンタリングや講演をお願いしています。では本文をお楽しみください。

リーンスタートアップの実験チームに「法務」担当を入れた方がよい3つの理由

2017年6月2日  ダン・トマ氏
リーンスタートアップの実験チームに「法務」担当を入れた方がよい3つの理由

リーン・スタートアップの実験をしている新事業開発チームに「法務部門」を参加させるように助言すると、ほとんどの場合、(控えめに言っても)その場の雰囲気が悪くなります。

規制の厳しい業界では状況はさらに最悪にひどく、ビジネスの実験について考えるだけで「迫害」への恐怖で製品チームが思考停止に陥ってしまうほどです。

リーンスタートアップの実験チームには、法務部門の同僚のことを「パーティーを台無しにする疫病神」というあだ名をつけて呼ぶ人がいるというのも特に驚く話ではありません。

最近、私は規制が非常に厳しい業界のある企業のイノベーション支援を始めました。同社への支援内容の大半は、製品チームがビジネスの実験を設計し、実行できるようにすることです。

私が一緒に仕事をしているのは、すべて組織横断チームです。ですので、マーケティング、顧客サポート、財務、R&D、法務などの人が同じチームにいるのは当たり前のことです。

そこでの結果に私はあるパターンを発見しました。法務担当者が加わったチームは、法務担当者がいないチームよりも実験の速度が速かったのです。また、さまざまな事項への準拠の対応や、合意形成も常に速かったのです。

そこで状況を整理して、このチームが持つ他チームにはない優位性について分析してみました。

1. 実験の実施可否の確認が早い。
実験の実施可否の見解を、ほぼ瞬時に得られます。「法務」担当者が本社拠点の別棟にいるのでなく、同じテーブルで向かい合っているので、実施可否の判断に要する時間が劇的に短縮されます。

2. 法的制約を踏まえた実験改善に役立つ。
実験を実施できない場合にも、背景情報を理解している人がチーム内にいるため、その場で実験を適切に修正できます。

チームに「法務」担当者がいなければ、実験の改善には時間がかかります。外部の「法務」担当者に依頼する場合には、現状を説明し、なぜ実験が有用なのか、その他いろいろと説明するために時間をかける必要があります。

3. リーン・スタートアップの実験プロセスに対する社内のサポートが強化される。
実験の法令順守を担保することで、多くの人の「信頼」を得られます。役職者がビジネス実験の話に反発しなくなるだけでなく、今度はそれを支持するようになります。このような支援を得られるのは、「法務がついていれば」実験プロセスにはデメリットは無くメリットしかない、という事実に根差しています。

(自社のブランドを傷つけずに実験をやり遂げる方法についてもっと知りたい方は、「イノベーションの攻略書」共著者のテンダイ・ヴィキ氏の記事を参照してください。)

これらの発見をふまえて、私はすべての新事業開発チームに対して、法務担当者に加わってもらうことをお勧めします(規制の厳しい業界の企業には特に有効です)。

ほとんどの場合、チーム協業の質は、各メンバーの個性に依存し、やはり(「法務の」)人間は人それぞれです。しかし、仮にどんなに頑固な人であったとしても、チームに法務担当者がいて、リーン・スタートアップの実験プロセスに参加してもらうことは有効だと思います。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
2022年も企業内のイノベーション・システム導入や、イノベーション会計など、引き続きダン・トマ氏のブログ記事を紹介してまいります。
次回は『イノベーション監査(”Innovation audit”)』という、企業のイノベーションの現状を可視化することの重要性についての記事です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」を共訳/監訳。

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