スタートアップ協業の評価方法に関するブログ最終回の今回は、「オープンイノベーションの測定:共同事業の測定("Measuring Open Innovation: measuring joint ventures")」という、スタートアップとの共同事業に関する取り組みを如何に測定するかについてのお話です。では本文をお楽しみください。
2022年2月20日 ダン・トマ氏
オープンイノベーションの測定:共同事業の測定
ダン・トマ氏が"The Innovation Accounting bookウェブサイト"に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)
本シリーズのここまでのブログ記事で、大企業がスタートアップとのオープンイノベーションに取り組む際に4種の形態があることを解説し、無償あるいは有償のパイロットプロジェクトの測定方法、スタートアップ買収の測定方法、スタートアップ投資の測定方法をそれぞれ見てきました。
今回は、オープンイノベーションの4つ目の形態として、スタートアップとの共同事業について、需要段階、実施段階、成果段階の各段階で追跡可能な指標を見ていきます。
需要段階の共同事業プロジェクトの測定:
共同事業の需要段階では、企業が以下の活動実績指標を追跡することをおすすめします。
- 一定の期間中に提案を受けた共同事業の提案数
- 一定の期間中に候補先に提案した共同事業の提案数
- 一定の期間中の1回の共同事業提案獲得までの平均費用(スタートアップ協業チームの旅費や関連イベントへのスポンサー費用を含む)
上記の指標を共同事業の種別ごと(新製品開発、市場調査、技術調査など)に見ることで、より細かに追跡可能です。
実施段階の共同事業プロジェクトの測定:
共同事業の実施段階では、企業が以下の活動実績指標を追跡することをおすすめします。
- 一定の期間中に開始に至ったプロジェクト数
- 全提案数のうち一定の期間中に開始に至ったプロジェクトの比率
- もし当てはまる場合には(例:製品開発)、これまでの章で社内チームについて解説したものと同じような個別の指標に関する進捗
- 一定の期間にかかった費用
- 一定の期間におけるプロジェクト1件当たりの平均費用
- 一定の期間に投じた経営資源(例:時間投資)
- 一定の期間におけるプロジェクト1件当たりの平均投入資源
- 事前合意した共同事業のロードマップを基準とした進捗状況
- 事前合意した目標に対する進捗状況
成果段階の共同事業プロジェクトの測定:
共同事業の成果段階では、企業が以下の活動実績指標を追跡することをおすすめします。
- 一定の期間における共同事業1件を完了するまでの平均費用(需要段階、実施段階の費用を含む)
- 個別の協業ごとの成果指標:個々のプロジェクトで異なる可能性が高く、プロジェクト開始前に相互に合意することが必要(例:共同開発の場合には製品からの新規売上、技術調査の場合には新たな知見を1件得るための費用など。)
- 成果を得るまでの平均期間
いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
スタートアップとの協業プロジェクトの取り組みを如何に測定するかについてのお話は今回で終了です。次回のブログは「ユニコーンを追い求めるのはやめましょう("STOP CHASING UNICORNS")」という、投資対効果の極めて大きいプロジェクトのみを新事業投資の対象にすることのリスクについてのお話です。