ユニコーンを追いかけるのはやめましょう
("STOP CHASING UNICORNS")

イノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。
今回も書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏の最新書籍『The Innovation Accounting』に関するブログ記事をご紹介します。
同書の日本語版『イノベーション・アカウンティング』を2022年10月5日に発売開始しました。

今回は、「ユニコーンを追いかけるのはやめましょう("STOP CHASING UNICORNS")」という、投資対効果の極めて大きいプロジェクトのみを新事業投資の対象にすることのリスクについてのお話です。では本文をお楽しみください。

「ユニコーンを追いかけるのはやめましょう
("STOP CHASING UNICORNS")」
~イノベーションへの高すぎる期待値が落胆をまねく~

2021年9月20日  ダン・トマ氏
ユニコーンを追いかけるのはやめましょう
(ダン・トマ氏が"OUTCOME社ウェブサイト”に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)

さかのぼること2010年に企業イノベーションのブームが始まって以降、世界中の企業が様々なイノベーションの取組みに数えきれないほどの資金を費やしてきた。ある企業は業種破壊の恐怖に突き動かされ、また別の企業にとってはより高い利益率の追求がその動機であった。理由の如何に関わらず、相当数の企業はイノベーション投資の結果に落胆している。

各社がイノベーション投資のリターンにフラストレーションを抱えている根本原因は、間違いなく企業トップの期待値が高すぎることに関連する。いつしか、誰かが、何らかの方法で、企業トップにイノベーションとは指数関数的な投資リターン倍率のことだという考えを吹き込んだのだ。そしてこの信条のもとに、指数関数的な投資リターン倍率をもたらさないものは見向きもされてこなかった(そして残念ながら今でも状況は変わっていない)。

しかし、ここで少し立ち止まってベンチャーキャピタルが指数関数的な投資リターンの追求にどう取り組んでいるかを見てみよう。ベンチャーキャピタルにとっては、イノベーション投資が日々の仕事のすべてであり、一件一件の投資の結果が彼らのすべてだ。それというのもベンチャーキャピタルにはイノベーション投資の資金を賄う既存事業側の仕事は無いからだ。

そしてベンチャーキャピタル・ファンド(VCファンド)の投資成績を詳しく見たら、投資の約65%は初期の投資金額の1倍かそれ以下しかリターンを得られていないことに驚くだろう。拙著イノベーション・アカウンティングでは、我々はこのような投資を「死に馬」と呼んでいる。VCファンドによる投資の約13%は「俊足の馬」で、4倍以下の投資リターンだ。しかし約23%の投資は5倍~20倍の投資リターンの「馬車馬」である。そして、20倍以上の投資リターンをもたらす「ユニコーン」すなわちエア・ビーアンド・ビー、UniPath、ウーバー、インスタグラム等々への投資は、投資全体の中でたったの1.4%しかないのだ。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。

次回のブログは「イノベーション投資の目標設定に際して設定すべき3つの項目("THE THREE THINGS YOU NEED TO SET GOALS FOR YOUR INNOVATION INVESTMENT")」という、イノベーション投資をより現実的な観点で考え、そこから具体的な成果を得るために事前に実施すべき状況分析と目標設定についてのお話です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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