イノベーション文化の測定

イノベーション

みなさんこんにちは。マキシマイズ代表の渡邊です。
今回から書籍『イノベーションの攻略書(原題:The Corporate Startup)』著者ダン・トマ氏の最新書籍『The Innovation Accounting』に関するブログ記事をご紹介します。
尚、同書の日本語版『イノベーション会計』を本年中に国内で出版すべく、現在翻訳を進めています。ぜひお楽しみに。

初回の今回は「イノベーション文化の測定(”Measuring Innovation Culture”)」という、自社にイノベーションを生む文化がどの程度育まれているかを測ることについてのお話です。
本ブログに関連して弊社で提供しているサービスに、イノベーション成熟度アセスメントがあります。一連の質問項目に回答してもらい、ベンチマーク値と比較することで、イノベーションに関する自社の強み、弱みを可視化するというものです。定期的にアセスメントを実施することで、イノベーションに関する健康診断のような形で利用できます。では本文をお楽しみください。

イノベーション文化の測定

2021年4月19日  ダン・トマ氏
イノベーション文化の測定
ダン・トマ氏が”Corporate Startup bookウェブサイト“に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)

企業イノベーションの分野において、最もよく使われる言葉の一つに「イノベーション文化」があります。
ネットフリックス、ゴア、ザッポスなど、市場で成功を収めた各社の成功物語では、イノベーション文化がいつも話題の中心となります。そして、旧来からの中核事業を超えて成長することができなかったり、最新の動向を素早く利益に結び付けることができなかったりする企業に足りない能力を示す必要があるときにも、イノベーション文化が持ち出されます。

すべての文化は、人々の集団を一つにまとめる共通の価値観、信念、慣習、態度、そして行動で構成されています。
その集団に所属し、うまくやっていくために、どうすればよいのかを簡潔に表現するという役割を、文化は果たしています。したがって、イノベーション文化を構築するためには、企業はイノベーションを押し進めるための価値観、信念、慣習、態度、そして行動を促進、褒賞しなければなりません。しかしながら、倫理的行動や透明性などと同様に、イノベーションは企業文化の一部にすぎません。

私たちが顧客企業のリーダーに文化について説明する際には、イメージしやすい様に次のたとえをよく使います。
「文化とは雲のようなものです。存在を目で見ることができ、効果を感じることができるのですが、触ることはできません。」

では、文化を測るにはどうすればよいのでしょうか?ショッキングなことに、実は測定できないのです。その代わりに、イノベーション文化の各種の特徴や、そのような望ましい特徴を育むための取組みであれば測定できます。

イノベーション文化を説明するために使った先ほどのたとえを覚えていますか?はい、雲も測定できないのです。気象学者が雲の測定結果について話しをするときには、たいていは雲の特徴や雲の起こした影響を見るのです。たとえば、気象学でよくつかわれる測定指標はオクタ(OKTA)で、この単位はある特定の場所を覆う雲の量を示します。0オクタ(快晴)から8オクタ(雲の切れ間なし)まで、全天のどの程度が雲で覆われているかで、空模様を推定します。

同様に、イノベーション文化の特徴や、イノベーション文化が企業に与える影響をみることで、イノベーション文化が企業に浸透しているかどうかを認識できます。

たとえば特徴のひとつとして、従業員の行動と自社へのエンゲージメントとの結びつき、があり得ます。強力なイノベーション文化を持つ企業の社員は、現状に挑戦したり実験したりする自由度を感じ、挫折への耐性が強く、そしてより重要な点として変化を怖れない、という傾向があります。このようにして、強力なイノベーション文化は社員の高いエンゲージメントを生み出しやすいのです。

文化を計測するフレームワーク

実際問題としては、まず自社の結果指標を見て、そのうちのいくつが文化による直接の影響を受けているかを確認します。そして、自社の結果指標に影響を与える文化の特徴をリストアップして、自社にそれらの特徴があるかどうかを測定します。

フレームワークの図

自社に備わっている文化の特徴と自社に足りない部分の現状をよく把握できたら、改善の取組みを開始できます。
私たちの書籍(”Innovation Accounting Book”)には、画期的なイノベーションのために望ましい以下の特徴など、自社のイノベーション文化を評価するための質問リストが載っています。

  • -失敗への寛容性
  • -多様性(視点、経歴、性別、そしてなにより意見)
  • -継続的改善の実行と推奨
  • -倫理(正直さ、誠実さ、約束の順守と信頼性、公平性、他者への思いやり、法律順守、説明責任)
  • -あつれきのない協力
  • -適応力
  • -共感
  • -心理的安全性
  • -自社の社員、特に部署名や肩書きにイノベーションという名前がついていない社員が、イノベーションは日々の仕事の一部であると、どの程度思っているか。

いかがでしたでしょうか。弊社では、ダン・トマ氏が欧州企業向けに導入支援を進めているイノベーション・システムを日本企業にも普及させるべく活動しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回は「イノベーション投資効率(”Efficiency of the innovation investment (EII)”)」という、イノベーション投資の費用対効果についてのお話です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ代表取締役
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」を共訳/監訳。

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