わずか2か月で新規事業インキュベーターを立ち上げたフォエストアルピネ("How Voestalpine set up a new Business Incubator in two Months")

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みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元Seconds"社(旧BMI Lab社)のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「わずか2か月で新規事業インキュベーターを立ち上げたフォエストアルピネ("How Voestalpine set up a new Business Incubator in two Months")」という製造業における事業創出体制構築についてのお話です。では本文をお楽しみください。

わずか2か月で新規事業インキュベーターを立ち上げたフォエストアルピネ("How Voestalpine set up a new Business Incubator in two Months")

2025年9月3日
わずか2か月で新規事業インキュベーターを立ち上げたフォエストアルピネ
Seconds"社ウェブサイト"のブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)

フォエストアルピネ社は、鉄鋼分野のノウハウを新たな収益源へと転換するための、再現性のある仕組みを模索していた。そこで、我々は2か月間のプロジェクトを通じて、インキュベーターチームにビジネスモデル・イノベーションの手法とツールに関するトレーニングを実施し、実際の2つの事業アイデアに適用した。このプロセスは現在、同社鉄鋼部門におけるイノベーションプロジェクトの標準プロセスとなっている。

課題

鉄鋼業界は、環境負荷への対応、世界的な供給過剰、価格変動、さらには厳格化する規制など、ますます多くの課題に直面している。こうした複雑な経営環境を乗り越え、長期的な成長を実現するため、オーストリア・リンツに本社を置く大手鉄鋼・テクノロジー企業グループであるフォエストアルピネ社は、先手を打つべく取り組みを開始した。2023~2024年度の売上高が167億ユーロ、従業員数が約5万2,000人に上る同社は、新たな事業機会を創出するためには、体系的なイノベーション推進の枠組みが必要であると認識していた。

この状況に対応するため、フォエストアルピネ社は2020年に「ニュービジネス・インキュベーター(NBI)」を立ち上げた。これは、イノベーションを促進し、アイデアの事業化を加速するとともに、変化し続ける業界環境に対応可能なスケーラブルなビジネスモデルを創出することを目的とした専門組織である。

当社チームのアプローチ

ビジネスモデル開発におけるインキュベーターの能力を強化するため、フォエストアルピネ社はイノベーションプロジェクトの推進効率と成果の向上を目指していた。その実現に向けて、我々はビジネスモデル・イノベーション(BMI)手法を中核とした体系的なトレーニングおよびコーチングプログラムを設計した。

このプログラムでは、はじめに参加者にビジネスモデル開発に必要な基礎知識と共通のフレームワークを提供する基礎ワークショップを実施する。続いてプロジェクトごとのワークショップを実施し、選定された2つのプロジェクトについて、BMIコンサルタントの指導の下でさらなる具体化とブラッシュアップを行う。理論と実践的な応用を組み合わせることで、インキュベーターは貴重な知見を獲得するだけでなく、その手法を実際の事業課題に積極的に適用することができる。その結果、学びを直ちに実務へ活用するとともに、実践を通じた理解を深めることができる。

はじめに、2023年5月に基礎教育ワークショップを実施した。その後、選定された2つのプロジェクトについて詳細な検討とさらなる深掘りを行う実践的な取り組みへと移行した。本プロジェクトは全体で2か月間にわたって実施された。

・フェーズ1:基盤構築

第1フェーズでは、新規事業インキュベーターチームに対し、BMI手法および関連ツールの根底にある体系的なアプローチへの理解を深めてもらうことに重点を置いた。インタラクティブかつ参加型の2日間のワークショップには選抜されたメンバーが参加し、ビジネスモデル・イノベーションの基本的な考え方と手法を学んだ。

ワークショップでは、まず理論の全体像を把握するための講義を実施した。続いて顧客視点(Customer Point of View)セッションを実施し、参加者は顧客の立場に立って、そのニーズや課題をより深く理解した。その後、55種類以上のビジネスモデルパターンを活用しながら、革新的なアイデアを体系的に創出する方法を学んだ。さらに、アイデアの優先順位付けを行うため、事業機会マップを用いて2×2マトリクス上で評価を行い、最も有望なコンセプトを選定した。その後、チームはアイデアシートを用いて選定したコンセプトを整理し、ビジネスモデルを構成する4つの主要要素について具体化を進めた。

ワークショップ2日目は、事業コンセプトの明確化と前提条件の検証に重点を置いた。参加者は、それぞれの事業コンセプトをバリュープロポジション・ピッチとして整理し、事業アイデアを説得力のある事業ストーリーへと落とし込んだ。続いて、収益逆算ツールを用いて初期的な財務予測を作成し、財務面からの事業性検討に向けた第一歩を踏み出した。最後の演習では、各チームの考えたビジネスモデルを成立させるうえで特に重要な前提条件を特定し、検証カードおよび検証管理表を活用して、それらをどのように検証するかを検討した。

このフェーズの終了時点で、チームは理論的な枠組みを理解しただけでなく、それを実際のプロジェクトに適用する方法についても実践を通じて学んだ。その結果、学びを実務に直結させるとともに、習得した知識や手法を直ちに活用する準備が整った。

・フェーズ2:知識を実際のプロジェクトに応用する


第2フェーズでは、選定された2つのインキュベータープロジェクトの事業コンセプトをさらに発展させながら、理論を実践へと落とし込むことに重点を置いた。この実践的なアプローチにより、プロジェクトそのものの完成度が高まっただけでなく、参加者は学んだ手法を日々の業務に取り入れることで、その理解を一層深めることができた。

両プロジェクトチームは、まず市場の基礎分析から着手し、TAM-SAM-SOM分析、競合分析、ならびに既存の顧客インタビューから得られた知見の整理・分析を行った。これらの初期評価を踏まえたうえで、各チームはそれぞれのプロジェクトの進捗段階に応じて、最も適したツールやフレームワークの活用に取り組んだ。

・グループ1は、製品やサービスのパッケージ案を具体化しながら、事業コンセプト全体を磨き上げる包括的なアプローチを採用した。事業モデルの「How(どのように実現するか)」の側面をより深く理解するため、目指すべきオペレーティングモデルを可視化するとともに、バリューチェーンを整理した。さらに、「Why(なぜ収益を生み出せるのか)」の側面については、収益モデルを定義するとともに、55種類以上のビジネスモデルパターンを活用しながら価格戦略の検討を行った。

・グループ2は、「Why(なぜ収益を生み出せるのか)」の側面に重点的に取り組み、収益モデルおよび価格体系の設計に注力した。その成果は、初期段階の事業計画案の基礎となり、プロジェクトを次の段階へ進めるための強固な財務的基盤の構築につながった。

これらのツールやフレームワークを実際のプロジェクトに適用することで、両チームは実践的な知見を取り入れながら事業アイデアを磨き上げることができた。その結果、それぞれの事業コンセプトは革新的であるだけでなく、戦略面および財務面から見ても実現可能性の高いものとなった。

成果

フォエストアルピネ社は、新規事業インキュベーター(NBI)チームにビジネスモデル・ナビゲーターの手法を導入することで、イノベーションを体系的に推進する仕組みを構築することに成功した。このフレームワークにより、チームは新たな事業アイデアを迅速かつ効率的に検討・開発できるようになり、事業コンセプトの立案から事業化の実行に至るまでのプロセスを体系的かつ円滑に進めることが可能となった。

フォエストアルピネ社は、BMI(ビジネスモデル・イノベーション)の手法を活用することで、各チームが事業アイデアを多角的に評価し、磨き上げ、最適化するために必要なツールやフレームワークを活用できるようになった。これにより、NBI(ニュービジネス・インキュベーター)プロジェクトの初期段階における柔軟性と適応力を高めることができるだけでなく、新たな事業が拡張性や持続可能性を備え、戦略的にも整合性の取れたものとなる可能性が高まった。

その結果、フォエストアルピネ社は有望な事業コンセプトを迅速に実現可能な事業機会へと転換できるようになった。これにより、イノベーションの創出を加速するとともに、業界における競争優位性の強化につなげている。

主な学びと今後のステップ

理論と実践を組み合わせて学ぶことで、手法の理解と習得を大幅に加速できる。また、実際のプロジェクトを題材として活用することで、学びを実務に直結させるとともに、短期間で具体的な成果を生み出すことが可能となる。今後、同社のインキュベーターでは、このプロセスをより多くのチームへ展開するとともに、新規事業のスケールアップに関する応用編の研修モジュールを追加していく予定である。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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