ハンスグローエはいかにして手法に基づくイノベーション文化を醸成したか("How Hansgrohe Sparked a Method-Based Innovation Culture")

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みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元Seconds"社(旧BMI Lab社)のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「ハンスグローエはいかにして手法に基づくイノベーション文化を醸成したか("How Hansgrohe Sparked a Method-Based Innovation Culture")」という、理論と実践を組み合わせたブートキャンプを通じて組織全体のイノベーション文化を育む取り組みについてのお話です。では本文をお楽しみください。

ハンスグローエはいかにして手法に基づくイノベーション文化を醸成したか("How Hansgrohe Sparked a Method-Based Innovation Culture")

2025年11月10日
ハンスグローエはいかにして手法に基づくイノベーション文化を醸成したか
Seconds"社ウェブサイト"のブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)

ハンスグローエは、デジタルのトレンドをいち早く捉え、それに基づいて行動できる人材の育成を目指していた。そこで、理論、実践的なツール、そして参加者同士の協働を組み合わせた短期集中型のブートキャンプを実施した。参加者は、具体的な手法を習得するとともに、新たなアイデアを積極的に推進するための自信を身に付けた。

課題

1901年にドイツのシュヴァルツヴァルトで創業したハンスグローエは、高品質なバスルーム製品およびキッチン製品のリーディングカンパニーとして、長年にわたり高い評価を得てきた。革新的なハンドシャワー、水栓、総合的なシャワーシステムで知られる同社は、プレミアムブランドの「hansgrohe(ハンスグローエ)」と、デザイン性を重視した「AXOR(アクサー)」という2つの主要ブランドを展開している。

消費者の嗜好がサステナビリティ、デジタル技術の活用、そしてパーソナライズされたデザインへと移っていく中、ハンスグローエは製品と組織文化を絶えず進化させ続けることで、競争力の維持に努めている。こうした変革を支えるため、同社は「ハンスグローエ・キャンパス・デジタル・ファカルティ・ブートキャンプ」を立ち上げた。このプログラムは、デジタルスキルの強化、新たなアイデアの創出、そしてイノベーションを推進するマインドセットの醸成を目的とした取り組みである。

課題への取り組み:デジタルキャンパスの構築とイノベーション文化の醸成

ハンスグローエは、デジタル技術に投資するだけでは不十分であると認識していた。スマートホーム機能、カスタムデザイン・ソリューション、サステナビリティへの要請といった新たなトレンドに対応するには、組織全体にイノベーション思考を根付かせる必要があった。そのため同社は、理論的な知見、実践的な応用、従業員の主体的な参加を融合させた包括的なアプローチを模索していた。そこでハンスグローエは、BMI Labを含む外部の専門家や研究機関と連携し、ブートキャンプの設計を行った。

当社チームのアプローチ

ハンスグローエと我々を含むパートナーは、ブートキャンプの内容を具体化するにあたり、同社向けにカスタマイズしたプログラムを共同で構築した。その内容は以下の通りである。

・ベストプラクティス事例、参加型演習、実際のケース討議を通じた理論と実践の結びつけ

・参加者自身の経験や課題の共有を促すことで、従業員の知見を取り込むこと

・研究機関や業界の専門家による外部知見を活用し、新たな視点を提供すること

この取り組みの一環として活用されたのが、オリバー・ガスマン教授とクリストフ・H・ヴェヒト教授が開発した詳細なフレームワーク「イノベーション・カルチャー・ナビゲーター」である。このフレームワーク(図1「イノベーション文化の主要要素」を参照)は、開放性、創造性、方向性の一致、信頼、透明性のあるコミュニケーションが、健全なイノベーション風土の形成にどのように寄与するかを示している。また、「失敗マネジメント」「共創」「アイデア創出」に関するベストプラクティスと併せて、このフレームワークは、組織の日常的な活動やマインドセットが企業のイノベーション能力をどのように形作るのかについて、ハンスグローエのチームが理解を深める助けとなった。

イノベーション文化に焦点を当てた「イノベーション文化」モジュール

「デジタル・キャンパス・ブートキャンプ」では、デジタルトランスフォーメーション(DX)や顧客中心主義、テクノロジーとコーディング、さらには「イノベーション文化」に至るまで、多岐にわたるモジュールが扱われた。「イノベーション文化」モジュールの担当講師陣は、文化とは人々が語るストーリーや日々のルーチン、すなわち日常的な行動様式によって形成されるものであると強調した(図2を参照)。

参加者は、図3および図4に示すように、ザンクトガレン・イノベーション・カルチャー・ナビゲーターの6つの要素について理解を深めた。

・俊敏性:新たなソリューションを模索する際に、柔軟かつ迅速に方向転換できる状態でいること

・インスピレーション:部門横断的な学習を促し、従業員が新たなアイデアに触れる機会を提供すること

・モチベーション:従業員がイノベーションプロジェクトに明確な意義と高揚感を見出せるようにすること

・方向性の共有:イノベーションへの取り組みを、より広範な企業目標と整合させ、全員が同じ方向へ進めるようにすること

・透明性:情報を誰もが利用できるようにするとともに、成功と失敗の双方を学びの機会として捉えること

・エンパワーメント:イノベーションを推進するために必要な自律性と支援をチームに与えること

このモジュールでは、理論学習と、共創スプリント、ブレインストーミング、ピア・フィードバックといった体験学習を組み合わせることで、参加者が日々の業務の中でこうした文化的側面を育んでいくための実践的なツールを提供した。

成果

参加者は、ハンスグローエにおける変革を推進するための実践に生かせる知見や実用的なツール、そして新たな意欲を得ることができた。主な成果は以下の通りである。

・イノベーション実践への自信向上: 参加者からは、チーム内の創造性を高めるための新たなアイデアや戦略を、以前より自信を持って提案できるようになったとの声が寄せられた。

・イノベーションスキルの拡充: デザイン思考からアジリティの概念に至るまで、このブートキャンプを通じて、従業員はすぐに実践できる手法に触れることができた。

・文化的な方向性の共有: 共通の目標と透明性のあるコミュニケーションを重視することで、本プログラムは、多様な部門を「イノベーションの推進」という共通の方針のもとに結束させる一助となった。

複数の参加者が、実践重視の形式を高く評価した。ハンスグローエの戦略的セールス・サポート・マネージャーであるマリサ・ウィッティグ氏は、次のように述べている。
「有益な知見や興味深い事例を講義で学ぶだけでなく、学んだ内容を自分たちのプロジェクトに適用する実践の機会も十分にありました。」

主な学び

ハンスグローエは、デジタルトランスフォーメーション(DX)におけるイノベーション文化の重要性に重点を置くことで、持続的な変革を実現するにはテクノロジーだけでは不十分であることを示した。むしろ、組織が長期にわたって真のイノベーションを生み出せるかどうかを左右するのは、人やルーチン、すなわち日々の行動、透明性の高いコミュニケーション、そして共有された価値観である。こうした包括的なアプローチは、参加者一人ひとりの能力を高めただけでなく、より強固で一体感のある組織文化の醸成にも貢献した。


いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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