2020年7月3日 ダン・トマ氏
コーポレート・スタートアップ協業チェックリスト(2)
(ダン・トマ氏が"The Corporate Startup bookウェブサイト"に掲載したブログ記事を、本人の許可を得て翻訳、掲載しています)
ここまで見てきたように、提携は課題やリスクを伴うが、それと同時に魅力的なメリットもあるという、複雑なプロジェクトだ。リスクを抑え、協業成功の土台を整備し始めるにあたり、まずは両者で以下のチェックリストを一通り確認すると良い。
-スタートアップ側のチェックリストの最初の項目は、提携の狙いに関するものだ。
「スタートアップとしての提携の狙いは何なのか?パートナーとなる大企業の狙いは何か?2つの狙いを両方同時に達成可能か?現状の提携の状況(例:有償デモ)を推進していくことで、両者の狙いを達成できるか?」
-2つ目の項目は、協業の成功測定指標に関するものだ。
「スタートアップとして自社は協業の成功をどのように測定するのか?パートナーである大企業はどのように実施するのか?2つの測定指標に矛盾はあるか無いか?」
-スタートアップ側のチェックリストの3つ目の項目は予算だ。
「スタートアップとして自社には協業の目標を実現するために十分な余力があるか?大企業側で確保されている予算(時間、人員、その他のリソース)は提携の目標を達成するのに十分か?」
-最後に4つ目の項目では、大企業側の担当者に注意を払う必要がある。
「話している相手の購買者としてのペルソナはどうか?コンタクトしているのはその人だけか?提携の目標を達成するためという視点で見た時に、適切な人物か?(少なくとも2人と話を進めるように気を付ける。もし大企業側のコンタクト先が1人だけで、その人が急に転職したり退職した場合、提携は危機的状況となる。運が良ければ、協業はその後も継続するが、その場合でもプロジェクトの新しい担当者は誰なのかを突き止めるのに相当の時間を費やさなければならない。そしてその遅れはスタートアップの事業継続が可能な時間に影響を与える。協業がまだ初期段階で契約を未締結の場合にはリスクはさらに大きい)。大企業側のコンタクト先のうちだれかは十分な影響力を持ち、大企業側でプロジェクトの優先順位に変更が入った場合にも協業プロジェクトを守ることが可能か?
誤解の無いように確認したいが、協業チェックリストが必要なのはスタートアップだけではなく、大企業側でも同様だ。しかしながら、大企業側のチェックリストは、スタートアップの物とは少し異なり、協業の責任者の立場によっても、さらに変える必要があるかもしれない。
-大企業のチェックリストの最初の項目は、スタートアップのチェックリストの最初の項目と似ており、協業の狙いだ。
しかしながら、問うべき質問が少し異なる。「達成すべき協業の目標は何か?協業の目標は自社の(イノベーション)戦略の方向性に沿ったものか?スタートアップ側の協業の狙いは自社の狙いと競合するか?」
-提携を実施する前に気を付ける必要がある大企業側の2つ目の項目は、自社内での協業の実施理由だ。
これを明確にするため、大企業は次の質問に対する答えを明確にしておく必要がある。「自社の目標を達成するためにスタートアップと協業することは理にかなっているか、あるいは自社内のリソースを使えば同じ成果を達成可能か?」
-3つ目に、大企業は協業(及びその結果として狙いを達成すること)の最適な方法を明確にする必要がある。
「狙いを達成するために、協業はどんな形(例:有償デモ、JV、無償デモ、等)が適切か?このような協業の形でスタートアップ側も彼らの目標を達成できるか?」
-大企業のチェックリストの4つ目の項目は、リソースとその配分に関してだ。
「協業成功のために必要なリソースは何か?必要なリソースを社内で調達可能か?」
-リストの次の項目は、協業の成功の測定方法である。
「協業の成功をどのように測定するのか?スタートアップ側ではどのように成功を測定するのか?両者の測定方法に矛盾は無いか?」
-リストの最後の項目は、大企業の社内の利害関係者についてである。
「社内で協業推進に責任を負うことになる利害関係者は誰か?協業成功のために適切な人たちか?」
どれほど互いに協業を必要としていても、2つの異なる規模の会社の提携が容易に進むことは決してない。協業の成功は、一つには互いに理解しあうこと(互いに相手側のリスクや協業を始める際に直面する差異を尊重する)、そしてもう一つは契約書に正式にサインする前に十分に準備をしておくことだ。
※本記事のオリジナルはダン・トマ氏が定期的に寄稿している「The Future Shapers」に掲載されたものです。
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次回は、『コーポレート・イノベーションを統制するコツ("Tips for governing corporate innovation")』として、大企業内で多数の新規事業を仕組みとして生み出していく際に、どのように管理すべきか、そのポイントをご紹介します。