Q&Aセッション
DXプロジェクトチームの新しい取組を鼓舞できるタイプのリーダーは、元々そういった資質を持っているのか?それとも行動によってそういう資質を獲得することができるのか
もともと資質を持っている人も当然いる。しかしトレーニングや実際のプロジェクトを通じてそのようなスキルを獲得することが可能だということがインタビューを通じてわかっている。スキル獲得のトレーニングによって、例えばメンバーへの共感や、メンバーに新たなインスピレーションを与える行動、モチベーションを高める行動を学ぶことができる。
一方、チームメンバーの立場であれば、社内人材の教育以外にも外部から適切な人材を獲得してくるという事も考えられる。ある銀行で行われたデジタル銀行の立上げプロジェクトの事例では、既存の組織内にデジタル化に詳しい人材や顧客視点に強い人材が見当たらなかったため、外部から接客業など銀行業以外の人材を採用する事で成功したという事例がある。そのためどこに自社に必要な人材がいるのかといった視点で考えることも重要と言える。
インタビューを通じてわかったベストプラクティスを教えて欲しい。また、それらの企業の成功要因は何か?
ベストプラクティスは非常に多くあり、ここですべてを紹介する事は難しいが、セミナーや書籍で紹介した、「組織」「技術」「プロセス」「リーダーシップ」「人材」「文化」の6つが主な成功要因となる。もう少し具体的に言えば、リーダーが既存事業のデジタル化であるS1カーブと、新たな事業の創造であるS2カーブの両者をしっかりとマネジメントすること、S1とS2に取り組む組織を分けること、社員がS1とS2のそれぞれの取り組みを理解した上で業務に取り組める環境を整えること、S1とS2に取り組むチームが協力できる文化を醸成すること、さらにS2をサポートするインキュベーターやアクセラレーターといった社内のプロセスを整備する必要がある。
著者が実際に参加していたボッシュの初期DX事例E-Bikeのプロジェクトでは、次の6つを実施した。1)S2組織を既存組織から分離、2)社内から能力の高い人材を結集、3)リーンスタートアップの手法で検証を行いながら実行、4)社内だけでなく外部から必要な人材を採用、5)外部のオープンソースコミュニティとの連携、6)事業拡大のタイミングでは物流など既存部門と連携し能力を活用。またS1とS2の成功要因が異なることをあらかじめ理解して進めたのが成功につながったと考えている。
社内でDXプロジェクトを進めるにあたり、性格やその他の観点など、どの様にメンバーを選択するべきか。
性格という点では新しいことに挑戦できるよう、チームメンバーを鼓舞できるキャラクターが必要だ。ただし、特にリーダーについては、それ以外に社内で他のメンバーや経営陣から信用を得ていることが重要となる。実績だけでなく、組織をうまく機能させるために社内のことをよく理解している人材であることが重要だ。
コダックでは多数のプロジェクトリーダーを外部から採用したが、社内のことをよく理解していないためにうまく機能せず失敗に終わったという例がある。