新登場のプラットフォームナビゲーターとは?:プラットフォーム・ビジネスモデルを設計し実現する方法("The new Platform Navigator: How to Design and Implement Platform Business Models")

イノベーション, ビジネスモデル・新規事業創出

みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元BMI Lab社のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。

今回のブログは「新登場のプラットフォームナビゲーターとは?:プラットフォーム・ビジネスモデルを設計し実現する方法("The new Platform Navigator: How to Design and Implement Platform Business Models")」という、プラットフォームビジネスを成功させるためのビジネスモデル設計手法についてのお話です。では本文をお楽しみください。

新登場のプラットフォームナビゲーターとは?:プラットフォーム・ビジネスモデルを設計し実現する方法("The new Platform Navigator: How to Design and Implement Platform Business Models")

2022年5月2日
新登場のプラットフォームナビゲーターとは?:プラットフォーム・ビジネスモデルを設計し実現する方法(BMI Lab社ウェブサイトのブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)

世界で最も企業価値の高い企業ランキングのトップ10社中8社に共通するのは何か?それは、これらの企業がプラットフォーム・ビジネスモデルに基づいて構築されている点だ。

プラットフォーム企業は、デジタル世界の仲介者として利害関係者間の取引を取りまとめることで、従来型のビジネスをしのぐ地位を確立してきた。直線的なバリューチェーンによる従来型のビジネスモデルから、プラットフォーム型のビジネスモデルへ転換するのは容易でないため、既に確立された既存事業を持つ企業は、ビジネスモデルの変遷によって既存事業に影響を受ける。プラットフォームの台頭が、さまざまな業界を破壊する可能性を秘めているのはそのためだ。

定義 - プラットフォームとは何か?

プラットフォームは、仲介役としてインフラを提供し、市場のさまざまな関係者をとりまとめ、取引を促進する。プラットフォーム成功の鍵を握るのがネットワーク効果である。プラットフォームの価値は、プラットフォーム利用者の数できまる。異なる顧客グループが互いに引き合うことで、プラットフォームは活性化し、繁栄する。例えばアマゾンで買い物をするユーザーが増えれば売り手も増え、その逆もまた然りである。

プラットフォームは数多くの従来型ビジネスに影響を与え、ネットワーク効果の活用があらゆる企業の重要事項になるだろう。

異なる種類のプラットフォーム

まず、プラットフォームには、根本的に異なる2つのタイプがある:

1.トランザクション・プラットフォーム

トランザクション・プラットフォームは、買い手と売り手(例:イーベイ)、あるいは提供者と消費者(例:エアビーアンドビー)を橋渡しするマーケットプレイスとしても知られている。

2.イノベーション・プラットフォーム

このタイプのプラットフォームは、外部企業が革新的なアプリケーションを開発するための基盤として機能する(例:Amazon Web Services)。

それに加えて、プラットフォーム・ビジネスには効果的な収益モデルが必要だ。プラットフォームはネットワーク効果(つまり、ユーザーを惹きつけること)によって成長するため、収益化戦略はユーザー離れを起こすものであってはならない。収益モデルには、次のような方法がある。

  1. 直接的な収益化(例:ユーザーがアプリにお金を払う)
  2. 間接的な収益化(例:コンテンツは無料だが、ユーザー向けの広告で稼ぐ)。

88種のパターン:「プラットフォーム・ナビゲーター」とは何か?

ザンクトガレン大学とボッシュIoTラボが開発した「プラットフォーム・ナビゲーター」は、プラットフォーム・ビジネスの事業モデルを設計、実装するためのツールであり、実際に活用されている。プラットフォーム・ビジネスの事業モデルの実装は継続的なプロセスであり、その実現には時間を要し、何回もの試行錯誤を求められる。このような実装プロセスに対応するために、パターンカードは5つのフェーズで構成されており、それぞれのフェーズにおけるビジネスの設定に必要なガイダンスと発想をカードから得られるようになっている。

プラットフォーム・ナビゲーター活用の5つのステップ:

プラットフォーム・ナビゲーターのステップ1からステップ3はすべて、「何をやるのか?」とビジネスモデル設計に関するものだ。一方で、ステップ4と5は、「どのようにやるのか?」とビジネスモデルの実装に関するものである。

1.アイデア創造:どのような事業機会が存在するか?

このステップの7分類、21種のパターン・カードは、事業アイデア発想の源泉として、自社のビジネスチャンスを見出すために役立つ。

2.事業設計:どのように価値を創造するか?

トランザクション・プラットフォームやイノベーション・プラットフォームの差別化に関する各種のカードをもとに、自社プラットフォームの中核的な提供価値、所有モデル、プラットフォームの運営モデルを策定できる。

3.収益化: どのように収益化するのか?

直接的、間接的なマネタイズ戦術に関する各種パターンの適用を検討することで、どのように収益化するかを議論する。各パターンの長所と短所、異なるパターンの組み合わせの可能性、さまざまなマネタイズ手段の現実的な実現可能性を考える。

4.規模拡大:どのようにプラットフォームを拡大させるのか?

プラットフォームの片側に集中する、重要なユーザーを引きつける、既存の資産を活用する、両面に集中する略、偶発的な好機を生かす、など規模拡大に関する戦略の各種パターンから発想のヒントを得て、自社プラットフォームの規模拡大戦略を選定する。

5.プラットフォーム管理:どのように管理するか?

イノベーションの起こし方、プラットフォーム中核部分の防御方法、ネットワーク効果の維持方法、パフォーマンスの監視方法など、プラットフォーム管理に関する各種のベストプラクティスから学びを得る。これらの各種パターンは、プラットフォームの実装プロセスにおいて何が重要になるかを理解するのに役立つはずだ。

キャンバスを使ってすべてをまとめる

パターン・カードに加え、「プラットフォーム・ナビゲーター」のキャンバスを使えば、プラットフォームの事業アイデアを明確かつ構造的に整理できる。

このキャンバスは、価値提供(何を提供するか)、価値創造(どのように価値を生み出すか)、収益獲得(なぜ儲かるのか)といった従来からのビジネスモデルの構成要素に基づいて構成されている。また、価値の流れ、規模拡大の方法、プラットフォーム管理など、プラットフォーム特有の要素も盛り込まれている。

このキャンバスを使えば、関係者との意思疎通がスムーズに行えるようになるため、顧客やパートナーとプラットフォームの事業アイデアをさらに議論し、検証し、洗練させるうえで役立つはずだ。

「プラットフォーム・ナビゲーター」活用のヒント

1.創造的なワークショップの開催

「プラットフォーム・ナビゲーター」を使用する一番良い方法は、創造的なワークショップを開催することだ。理想的には多様な参加者による3人から5人のチームを複数作ることが望ましい。グループごとに各フェーズをそれぞれ独自に進め、最終結果を互いに比較する。あるいは、既にプラットフォームの基本的なビジネスモデルのラフ案が存在する場合には、より少人数のグループに分かれてプラットフォーム・ナビゲーターの各フェーズを分担して検討し、その結果を統合して全体像を描くことも可能だ。

2.適切な雰囲気作り

創造性を高め、既成概念にとらわれない発想を得るために、異なるバックグラウンドを持つ参加者を選定する。オープンな考え方で創造的な参加者を選ぶことが重要だ。プラットフォームの事業アイデアは、その場で良し悪しを判断せずに、すぐに書き留めておく。事業アイデアの評価は一番最後に実施し、1~3個の事業アイデアをリストアップする。理想的には、参加者は事前にプラットフォームの基礎知識を身につけておく。

3.検討対象を選ぶ

基本的には、一度に5つのフェーズすべてを通して考えることをお勧めする。しかしながら、自社の状況や個別の要件に合わせて、検討プロセス全体を調整してもかまわない。「プラットフォーム・ナビゲーター」手法は自由度の高い設計になっており、自社にとって最も重要な対象だけを抜き出して検討することも可能だ。

4.パターンカードの枠を超えて考える

プラットフォームの全体像を把握するためには、すべてのパターンを知ることが重要である。パターンには、非常に具体的な戦略や例を示すものもあれば、より一般的なガイダンスを示すものもある。パターン・カードの中には、自社のビジネスや事業環境に当てはまるものもあれば、そうでないものもある。有用であれば、異なるパターン・カードを組み合わせても構わない。

Bosch IoT Labの「プラットフォーム・ナビゲーター」についての詳細はこちらを参照してほしい。

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いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
次回は、オープンRANに関するジョン・メツラー氏のブログ記事の第3弾「オープンRAN(3):主要RANサプライヤー」をご紹介予定です。

WRITER

株式会社マキシマイズ代表取締役
渡邊 哲(わたなべ さとる)
株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師

東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。

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