ロシュはいかにして世界中の従業員のイノベーション能力を強化したのか("How Roche Builds Innovation Capabilities Across its Global Workforce")
みなさんこんにちは。マキシマイズの渡邊です。今回も、既存事業を持つ大企業がシリコンバレーのスタートアップに負けない画期的な新規事業を創造するために、インダストリー4.0の一環としてスイスで開発された手法である『ビジネスモデル・ナビゲーター』開発元Seconds"社(旧BMI Lab社)のブログを皆さんにご紹介します(※BMIとはBusiness Model Innovation:ビジネスモデル・イノベーションの略です)。
今回のブログは「ロシュはいかにして世界中の従業員のイノベーション能力を強化したのか("How Roche Builds Innovation Capabilities Across its Global Workforce")」という、グローバル企業における新規事業創出人材の育成についてのお話です。では本文をお楽しみください。
ロシュはいかにして世界中の従業員のイノベーション能力を強化したのか("How Roche Builds Innovation Capabilities Across its Global Workforce")
2025年9月3日
ロシュはいかにして世界中の従業員のイノベーション能力を強化したのか
(Seconds"社ウェブサイト"のブログ記事を、同社の許可を得て翻訳、掲載しています)
スイスに本拠地を持つ世界的な製薬会社のロシュは、自社の従業員が新たな事業機会を発見し、それを具体的な事業へと発展させる能力を身に付けることを目指していた。そこで当社は、ビジネスモデル思考、ビジネスモデル設計、そしてビジネスモデルの検証手法を体系的に学ぶ4段階の学習プログラムを設計した。このプログラムは既に数百名の従業員の育成に活用されており、社内チームによる新規事業アイデアの創出と事業化の推進に役立っている。

ロシュは、スイスのバーゼルに本社を置く、医薬品および診断分野における世界的なリーディングカンパニーである。従業員数は10万人を超え、2023年の売上高は642億スイスフランに達している。同社は、科学の進歩を通じて患者の治療成果の向上に貢献することを使命としている。ロシュは、がん領域、免疫学領域、ならびに診断分野における革新的なソリューションで知られ、医療の可能性を絶えず切り拓いてきた。研究開発への継続的な投資を強みとして、個別化医療の分野をリードしながら、最先端の治療法や診断技術を世界中に提供している。
我々のチームは、ロシュ・ヘルスケア・コンサルティング(RHC)と共同で、ロシュの従業員が新たな価値創出を担うための能力を身に付けられるよう、同社向けにカスタマイズした学習プログラムを開発した。このプログラムは、ビジネスモデル・イノベーション(BMI)の手法を中核として構成されており、デジタル領域における価値創出や新たな収益機会の創出を推進し、ロシュの戦略的変革を牽引できる人材を育成することを目的としている。
課題
デジタル化の進展や新たな医療提供モデルの登場により、ロシュには新たな収益源の創出が求められていた。しかし、多くの従業員はビジネスモデルに関する共通言語を持たず、アイデアを体系的に検証しながら事業へと発展させるための明確な手法も十分に備えていなかった。そのためロシュは、こうした能力を短期間で組織全体へ展開できる、スケーラブルな人材育成の仕組みを必要としていた。
こうした課題に対応するために導入されたのが、BMIラボによる研修プログラムである。
当社チームのアプローチ
この学習プログラムは4つの教育モジュールで構成されており、まずビジネスモデル思考を身に付けるための基礎研修から始まる。続いてビジネスモデル設計研修を実施し、最後にビジネスモデルのテストと検証の研修を行う。これにより、ロシュの従業員は、新たなビジネスモデルを創出し、設計し、さらにその妥当性を検証するために必要なスキルを体系的に習得することができる。

ビジネスモデル思考研修では、ビジネスモデルを体系的に把握し、説明するためのフレームワークと共通言語を習得する。これにより、ロシュの従業員は、ビジネスモデルがどのような仕組みで価値を創出し収益を生み出しているのか、その本質的なメカニズムを理解できるようになる。また、組織全体でビジネスモデルに関する共通理解を形成することで、新たな事業機会やビジネスモデルについて議論しやすい土台を構築することが可能となる。
ビジネスモデル設計研修では、55種類以上のビジネスモデル・パターンカードを活用しながら、革新的なビジネスモデルのアイデアを創出し、その中から最も有望な案を選定するとともに、アイデアシートを用いて具体的な事業構想へと落とし込む手法を学ぶ。また、新たなビジネスモデルについて、内部整合性および外部整合性の観点から検証を行い、組織の強みや保有能力との適合性、市場ニーズとの整合性を確認しながら、その実現可能性を高めていく方法についても習得する。
ビジネスモデルのテストと検証の研修では、テストサークル・モデルとテストカードを活用し、新規事業に伴うリスクや不確実性を体系的に低減していく手法を学ぶ。これにより、ロシュの従業員は、自らのビジネスモデルを段階的に改善・検証しながら、市場投入に向けた実行可能な事業モデルへと磨き上げていくことができる。
最後に、希望するチームに対しては、ロシュの社内新規事業プロジェクトを対象とした個別のコーチング支援を提供している。このコーチングでは、各プロジェクトがビジネスモデル・イノベーションの手法に沿って推進されるよう支援するとともに、プロジェクトの進捗を加速し、事業化に向けた着実な実行を後押しする。
成果
本研修を通じて、世界各地の数百名に及ぶロシュの従業員が、新たな事業機会を創出するために必要な基礎的なスキルと実践ツールを習得した。さらに、当社はロシュの社内プロジェクトとも緊密に連携し、新規事業の創出やイノベーション推進を支援することで、同社の戦略的変革に貢献した。
主な学びと今後のステップ
分かりやすい共通言語と実践的なツールは、大企業におけるイノベーション創出を加速させる。また、コーチングを組み合わせることで、研修で学んだ内容を実際の業務や新規事業プロジェクトへと確実に定着させることができる。今後ロシュは、新規事業のスケールアップに関する応用編の研修を追加するとともに、本プログラムの受講者をピアメンターとして活用しながら、組織内でのイノベーション能力のさらなる強化を図る予定である。
いかがでしたでしょうか。弊社では、ビジネスモデル・ナビゲーターを日本企業にも普及させるべく、ワークショップやプロジェクト支援など様々な支援サービスを提供しております。ご興味の方は是非お問い合わせください。
WRITER

- 渡邊 哲(わたなべ さとる)
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株式会社マキシマイズ シニアパートナー
Japan Society of Norithern California日本事務所代表
早稲田大学 非常勤講師
東京大学工学部卒。米国Yale大学院修了。海外の有力ITやイノベーション手法の日本導入を専門とする。特に海外ベンチャー企業と日本の大手企業や団体との連携による新規事業創出に強みを持つ。三菱商事、シリコンバレーでのベンチャー投資業務等を経て現職。ビジネスモデル・ナビゲーター手法の啓蒙活動をはじめ、日本のイノベーションを促進するための各種事業を展開中。
「アントレプレナーの教科書」「ビジネスモデル・ナビゲーター」「イノベーションの攻略書」「DXナビゲーター」「イノベーション・アカウンティング」を共訳/監訳。



